一方の鳴坂さんは、SCM事業部事業本部長で、アマゾンが誇る物流網の構築、運用、利便性の向上を図る部署を統括している。

鳴坂育子さん

商品を欠品させないための在庫補充システムの導入が担当だったので、在庫計画の背景にある統計学をしっかり学んだ。さらに「アメリカ本社が開発するサプライチェーンシステムを導入するには、どんなロジックが組まれているか、開発者とより深い話をしてシステムの効果を最大化することが大事。それにかかわる本も随分読みました」と導入後の学習も怠らなかった。「これが欲しい!」と思ったときにアマゾンを検索して、「在庫なし」の表示が出るとがっかりするが、「在庫あり」「明日お届け」の表示が出ると安心感につながる。その裏には鳴坂さんたちのたゆまぬ努力があったのだと気づく。

読書、人との交流などアナログ的な情報収集

ジャンルが違う仕事をしている2人だが共通点もある。本を読み込んだり、人と情報交換したりなど、学びのアプローチは意外とアナログ。古屋さんは「オンラインの情報も拾いますが、まずはその情報がどこからきているのかを確かめます。また、スマホやPCで完結しないように、なるべく人と交流するようにしています」。古屋さんは30歳でMBAを取るために大学院に入学したが、そのときに一緒に学んだ仲間や、前職やe-コマースのコミュニティーから情報を得たり、人材を紹介してもらうこともある。

古屋美佐子さん

鳴坂さんは、物流業界が参加する「日本ロジスティクスシステム協会」に所属し研修も受講した。他のメーカーのP/L(損益決算書)やB/S(貸借対照表)を見て、物流費が占める割合はどのくらいなのか分析もした。他社の数字を見る機会はなかなかないので、大変意義のある学びといえる。さらには物流を経営の視点からとらえる「ロジスティクス経営士」という資格も取得し、仕事に生かしている。

年齢を重ね学びが変容していった

2人とも年齢を重ね、グループの長に就いてから、学びの質が変わってきたという。「若いうちは、自分を認めてほしいので、『私は○○ができます』という具体的なハードスキルが多かったけれど、40代以降はもっと抽象的なソフトスキル、例えば心理学や人間関係など内面の学びの比重が大きくなってきました。7年前にヨガインストラクターの資格を取ったので、会社のスタジオで社員と一緒にヨガを楽しんでいます。集中力や心の落ち着かせ方を学びたくて」と古屋さん。

また、1人から3人に人員を増やしたからといって、単純に3倍の成果ではなく、もっと大きな成果を出すには、どうやったらチームメンバーが動いてくれるのだろう?ということを鳴坂さんは常に考えている。「会社の規模に合わせて、自分たちも成長していかなくてはならない。チームが大きくなるたびに、さまざまなコーチングの本を読みました」