ビール造りの現場に立ち、女性初の工場長になった神崎さん。キャリア最大のピンチは部長就任後の工場閉鎖。部下たちと向き合い、「腐らずリスタートしよう」と説得したといいます。

製造ラインに入るため、異動希望を出し神戸へ

ビール業界で女性初の工場長、初の女性執行役員、そしてこの春、常務執行役員に就任した神崎夕紀さん。周囲は男性ばかりという製造の現場に入り、目の前のことに向き合った結果、“初”ずくめのキャリアが形成された。そんなさりげなさが穏やかなたたずまいにある。もともとは大学で農化学を学んだ理系。「技術で貢献しようという気持ちがバックグラウンドにある」と自己分析する。

キリンビール 常務執行役員 生産本部 横浜工場長 神崎 夕紀さん

「医薬品開発のベンチャー企業を経てキリンビールに入り、最初に福岡工場に勤めました。それまで、ものを作るためにたくさんの人が大きい設備を使って働いているという状況が想像できていなかったので、工場のダイナミックさには衝撃を受けましたね。品質保証の仕事をしていましたが、製造のプロセスに加わりたいと強く思うようになりました」

地域限定採用だったが異動希望を出し続け、入社6年目にオープンしたばかりの神戸工場に転勤になった。

「最初の1年間はすごく楽しかったですよ。立ち上げ直後ですから現場は混乱していたし、当時のことなので工場に泊まり込みで作業する日もありました。でも、品質管理担当として、商品を作りその良しあしを判断し出荷していくという製造のプロセスを1から経験できたので、充実していましたね。