親世代にとって息子の嫁は家族か客か

意外かもしれませんが、近年になって帰省の回数自体は増加しているはずです。ひとつには、少子化が進んで2人っ子や1人っ子が増えている今、親子関係は以前より緊密化していますし、たくさんのきょうだいがいた時期に比べると、帰省の意味も重くなっています。また、親にあたる世代の寿命も延びているため、帰省を繰り返す期間もそれだけ長くなっています。

こうした流れの中で、夫の実家への帰省を続けていくのは大変です。交通費などのコストはもちろんありますが、働く女性にとってお正月やお盆は貴重な休暇のひとつ。無理して夫に同伴するよりも、自分の親に会いに行く、あるいは自宅で休息するなどして過ごしたいと考える人も多いでしょう。

帰省は親孝行という意味でもとても大事なものですが、長く続けるためにはできるだけ楽にしたいもの。父子帰省はその手立てのひとつであり、経済的かつ合理的な答えだと思います。

「父子帰省すると夫の両親に変に思われるかも」と思う女性もいるかもしれません。しかし、近年は親の世代でも、子の配偶者=家族という実感が薄れてきています。お嫁さんは家族の一員であると同時に“お客さん”なのです。もう少し若い世代では、完全に“家族ではなく客”という意識になっているはずです。

海外では我が子の配偶者は“お客さん”

これも、夫婦を2人でワンセットとは見なさない個別化の表れと言えるでしょう。こうした個別化は欧米の国ではさらに進んでいて、親は我が子の配偶者が家に来たら、お客さんとしてもてなす国も多いのです。仲よくはしても、一昔前の日本でよく見られたように嫁に家事をさせるようなことはありません。

少子化やジェンダー平等は世界的な趨勢ですから、家族のありかたは、世界的に見ても個別化へと向かっていると思われます。日本の家制度は基本的には父系的な面が強かったのですが、最近になってこれが弱まり、代わって個別化が進み始めました。共働きが増えて男女の対等化が進んだことも、変化を加速させたのかもしれません。

その意味では、日本の家族規範は今、変化の真っただ中にあると言えるでしょう。夫と妻どちらの家に帰省するか、どちらの墓に入るか、息子の嫁は家族か客か。いずれも、今は昔ながらの考え方と現代的な考え方とが入り混じっている状態なのです。

そんな過渡期にあるわけですから、どう行動するのが正解なのか、相手が同意してくれるのか、悩んでいる人もたくさんいます。例えば、妻が「父子帰省してほしい」と思っていても、夫は家族帰省が当たり前と考えているかもしれません。そんな場合はどう説得すればよいのでしょうか。