CMなしで、なぜ人気なのか

その名も、「Shark Ninja(以下、シャークニンジャ)」。「ニンジャ(忍者)」の名から「日本の会社では?」と発想する方も多いと思いますが、実はアメリカ生まれの日本法人です。「シャーク」は、初代掃除機が「サメ」の形に似ていたから、「ニンジャ」は、その手さばきの素早さに着想を得てネーミングされたそうです。

皆さんもご存じの通り、ダイソンやアイロボットの製品は、テレビ等への圧倒的なCM出稿戦略で人気を得ました。

発売後わずか3カ月で大ヒットしたエヴォパワー

ところが「シャークニンジャ」の掃除機は、日本でほとんどテレビCMを流していません(現在はゼロ)。にも関わらず、2018年9月中旬に発売されたハンディクリーナー(「EVOPOWER(以下、エヴォパワー)」は、日本での発売からわずか3カ月で、コードレスハンディークリーナー市場の売上台数ナンバーワンを記録しました。

一体なぜ、ここまで人気を得られたのでしょうか。そこには、日本独自の「掃除シーン&ニーズ」に対する徹底的な研究や、今多くの日本企業が課題とする「グローバル・マーケティング戦略」の秘策が隠されていたのです。

社長自ら家電量販店めぐり

今回、シャークニンジャ(日本法人)のゴードン・トム社長に直接インタビューさせて頂きました。彼は、1998年にダイソンが立ち上げた初代ダイソン日本法人の社長や、エレクトロラックス日本法人の社長などを歴任してきた人物。38年前に初来日し、英国外務省の外交官などを務める中で、日本人の文化や国民性をとてもよく理解してきた人です。

「多くの家電メーカーが“テクノロジー発想”だが、私はやはり“ユーザー発想”こそ大切だと考えています」と語気を強めるゴードン社長は、みずからも必ず毎週末、車で日本中の家電量販店に出向くそう。

そこで掃除機を買いに来た消費者や、店内をうろうろしている消費者を自分の目で見て、日本ユーザーの行動様式や購入決定プロセスを見ていると言います。いわば、私たちマーケターが仕事として行なう「定性調査」を、習慣的に実行しているわけですよね。

なぜ「店頭」を重視するのか。それは「日本の場合、高価な掃除機を買おうと考える人の多くが、いまだに店頭で使い心地を試すから」だと言います。