各局MCが札幌のコースを批判

この問題はさらなる広がりを見せます。

札幌開催が決まった当日、各ワイド番組では札幌のマラソンコースが五輪にふさわしいかどうか議論していました。

あるワイド番組の中では、ルート候補地である新川通りの映像を流し「こっちの方がドーハに近い」「景色に何もないから走るのがしんどい」といった意見が飛び交い、最後にMCが「ずばり東京か札幌か?」と解説者に問うていました。意見を聞いているものの、一方的な内容という印象がぬぐえませんでした。

他の番組でも現地にレポーターを派遣し「東京には名所がたくさんあるけれど、これだけ景色に何もないのは実況泣かせ」「沿道に応援も少ないだろう」と批判が繰り返されました。

これらの放送を観た札幌の視聴者からは「そもそも札幌が誘致したわけではないのに、こんなに批判されるなんて心外」といった声があがり、Twitterでは「#札幌dis」というハッシュタグがトレンド入りするまでに。自分の住む街が、何も悪いことをしていないのに批判されて気持ちの良い人はいないでしょうから、反応は当然のものといえます。

視聴者の気持ちを考えず一方的な番組の構成をするのは同業者としては疑問に思いましたし、番組内容は公平であるべきと掲げる放送倫理の観点からも逸れている印象を抱きました。

なぜ、こんなことになってしまったのか

五輪の開催をめぐり、なぜ多くの人の心を消耗させ対立を生む事態になってしまったのでしょうか? それはIOC、東京都、そしてマスコミとすべての立場にある人たちが問題を直視せず、場当たり的に対応してきたことが大きいと言えます。

急な開催地変更をしたIOC、効果に疑問のある暑さ対策に多額の税金を費やした東京都、それらの十分なチェックを行うよりも札幌批判に終始してしまったワイド番組と、結局、それぞれの立場の人たちが責任を果たさず一番弱い立場の人たちにしわよせが行く形になりました。

そしてこれと似たことは、私たちの周囲でもたびたび起きています。