他人が家の中に入ることに抵抗の意識も

さて、日本で家事のアウトソースが進まない3つ目の理由は「他人が家の中に入るのが嫌」という意識です。近年は核家族化が進み、家の中にいるのは両親と子どもだけという家庭が増えています。そこに他人が入ってくるのは抵抗があるという人も多いでしょう。

かつては、親戚や配達業者などが勝手口から自由に出入りしていた時代もありましたが、今はセキュリティ意識もかなり高くなりました。また、お手伝いさんにプライベートを知られたくない、散らかった家の中を見られたくないと考える人も少なくありません。

「今日はお手伝いさんが来るから」と、いつもより片付けに励むようでは、せっかくのアウトソースも本末転倒。ただ、これらの意識は信頼関係さえできれば解決するはずです。

育児支援に加えて家事支援があるべき

もう一つ、日本ではまだ家事代行のコストが高いことも原因に挙げられます。特に質の良いサービスは高額ですから、共働き家庭の多くが「こんなに払うなら、ゆとり時間を犠牲にしても自分でやったほうがいい」と考えても不思議ではないでしょう。

理想は、所得が高い人も低い人も等しく利用できること。共働きやワーク・ライフ・バランスを推進するのなら、本来は育児支援に加えて家事支援もあってしかるべきだと思います。

繰り返しになりますが、日本で家事のアウトソースが進まない理由は、①家事を「ワーク」ではなく「ライフ」と捉えている、②家事に完璧さを求める人が特に女性に多い、③他人に家に入られたくない、④コストが高い、の4つが考えられます。

いずれも、解決にはまだ時間がかかるでしょう。まずは家事を「ワーク」と捉える意識を持ち、効率化を図るための家事改革や、夫婦間での家事分担を進めていただきたいと思います。そうすれば、本当の意味での「ライフ」の時間も、少しずつ増えていくのではないでしょうか。

自分のために使える自由時間、あるいは家族とともに過ごす自由時間は、人生をより楽しくしてくれるもの。そうした意味でも、「ライフ」の時間をどう確保するかは、今後の共働き社会において重要なテーマになっていくだろうと思います。

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筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授

1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。