家事・育児の分担や家族のあり方を研究してきた立命館大学教授の筒井淳也先生に、これからの共働き夫婦のあるべき姿についてお話を伺いました。キーワードは「生計維持分担」。日本ではフルタイムで働く夫婦ですら、2人で家計を維持していくという意識が低いと言います。その理由とは――。
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フルタイムでも稼ぐ覚悟がない女性も

真の共働き家族を目指すためには、「生計維持分担」がキーワードになります。「生計維持分担」とは、夫婦2人で家計を維持しているという意識があることです。

共働きと言っても色々あります。例えば、フルタイムでバリバリ働いている夫と、家計の補助として働いている妻という組み合わせの夫婦。それから、夫も妻もフルタイムでバリバリ働いている夫婦。

実はフルタイムで働いている女性でも、生計維持分担の意識がないことがあります。「私はいつ辞めてもいいけど、あなたは辞めちゃダメ」と思っている。真の共働き家族を目指すなら、夫婦2人とも、生計を維持していこうという意識を持っているはずです。女性側も「私の所得も生計にきちんと貢献しているし、夫も同じように貢献している」という感覚を持つことが大切になります。

男性は大黒柱から降りたがっている

生計維持分担の意識があれば、例えばどちらかが転勤になったときに、「当然、女性側が仕事を辞める」ということにはなりません。少なくとも夫婦できちんと話し合うことになります。それぐらい対等になれば、互いに仕事に対して気持ちが楽になります。どちらかが働けなくなったら家計が行き詰まる状況だと、病気もできないし、ひと休みもできない。会社でひどい立場になっても辞められない。それは健康的な状態ではないと、私は思います。

女性の生計維持分担意識の低さは、社会の変化と共に、徐々に変わっていくでしょう。高度経済成長期以降は「大黒柱は一人」という風潮がありますが、男性はもはや大黒柱から降りたがっていると思います。女性も家計を一人で担いたくない人が多いでしょうし、2人で「真の共働き」はゆっくりと増えていくと思いますね。