リーダーの役割や持つべき資質とは

先にお話しした3カ条は、道を開くものであると同時に、リーダーが持つべき資質でもあります。加えて、部下の成長という観点も忘れてはいけません。もしあなたの周りに思うように育たない部下がいたら、「彼や彼女が成長できないのは、自分がどんなリーダーだったからだろう」と考えてみてください。会社に役立つ、引いては社会に役立つ部下を育てるにはどうすればいいか。それを考えるのもリーダーの役割の一つだと思います。

現在、当社では再生を進めるとともに、社員ひとりひとりを輝かせるためにさまざまな取り組みを行っています。全員が持つべき意識・価値観・考え方として「JALフィロソフィ」を策定したほか、生産性を高める環境づくり、多様な人財の育成、挑戦する組織への成長などを重点目標に定めています。

その中には働き方改革やダイバーシティ推進も含まれています。近年、当社では総実務労働時間や時間外労働が減少傾向となり、テレワーク時間が飛躍的に増加しました。また、女性パイロット数や女性整備士数も徐々に伸びてきています。

さらに、挑戦する組織となるためには、プロフェッショナル集団の形成が欠かせません。今後は世界の変化がますます激しくなり、経済も事業も不確実さや曖昧さが増していくと考えられます。企業はそれに備えて、計画外の事態に遭遇した時にも、個々が自分で考え判断できる集団へと変わっていく必要があります。

具体的には、大量生産や大量販売の時代は終わり、個人を抱え込んでいく「個人継続サービス」が重視されるようになると言われています。また、消費者の間でも、モノを買って満足するのではなく、コトに感動する傾向が高まるでしょう。

これに対応するには、マネジメント側も計画力重視・マニュアル順守・規律型組織といった画一的な考え方から、対応力重視・試行錯誤・自律型組織といった多様性重視の考え方へと転換を図らなければなりません。(出典: 一般社団法人ジャパンダイバーシティネットワーク ダイバーシティ・マネジメント研究会資料)この転換を実現するには経営トップの意識改革が重要ですが、社員からのボトムアップも非常に大事です。

ですから、会社に対してぜひ積極的に意見を発信してください。現在リーダー職にある、またはリーダーを目指している皆さんなら、会社をよくするためのボトムアップという重要な役割を、きっと果たせるはずです。先の3カ条を参考に、ライフイベントも社内イベントも前向きに捉えて、道を切り開いていっていただきたいと思います。皆さんの活躍を期待しています。

文=辻村洋子

大川 順子(おおかわ・じゅんこ)
日本航空 特別理事

1954年生まれ。77年日本航空入社、78年東京理科大学卒業。国際客室乗員部パーサー、客室乗員訓練部教官などを経て、2010年に同社の経営破綻とともに執行役員に就任。代表取締役専務執行役員、副会長を経て19年より現職。