壁にぶち当たった時に道を開く3カ条
そして「イベント」には、ライフイベントと会社に起こるイベントが含まれます。私の場合、前者は出産・子育てであり、後者は経営破綻でした。どちらも不安や重圧が大きく、ネガティブに捉えてしまいがちですが、振り返ってみると、次の3つを意識したことで道が開けたように思います。
道を開く3カ条は、①とにかくあきらめない、②常に明るく立ち向かう、③目の前のことに全力で取り組む。私は出産後にCAに復職したのですが、国際線の担当だったため1カ月のうち20日は家をあける生活でした。罪悪感もありましたが、保育園の先生の「一緒にいられる10日のうちに3倍ハグして。それがあなたの育児なんだから引け目に思うことなんてない」という言葉に励まされました。
それでも、やはりもう少し家にいる時間を増やそうと、拘束時間の短い国内路線で一定期間乗務する制度を利用しました。育児のために海外フライトをあきらめたと思うかもしれませんが、私にとってこの環境変化は多くのことを学ぶ貴重な経験となり、今の立場へもつながっていると思います。
一般的な会社の異動と同じで、国際線と国内線ではまったく職場環境が違いました。毎日が勉強でしたが、全力で取り組んだおかげで、自分なりにCAの仕事の本質に気づくことができたのです。「国際線が飛べなくなる」と否定的に捉えるのはなく、「同じ路線を何度も経験することになるので、この路線のプロになってやろう」と前向きに考えたのがよかったのでしょう。
皆さんも、異動などの環境変化をネガティブに捉えないでください。異動先にも必ず、自分のものにできる何かがあります。私は国際線と国内線の両方を経験したことで視野が広がり、管理職への道が開けました。元をたどれば、出産と育児がなければこの環境変化もなかったわけです。おそらく、役員になる機会も得られなかったでしょう。
次に、もう1つのイベントである経営破綻についてお話しします。私が役員になったのは、「解散ではなく再生を」という方針が決まった直後でした。同時に、当社最大の組織である客室本部も率いることになりました。
ミッションは明確です。8000人の部下と一緒に、何が何でも会社を再生させなければならない──。それまで経験したことのない重圧でした。私はこの経験を通して、絶対に後に引けないという覚悟と責任を持つこと、そしてリーダーとしての役割を学ぶことができました。
今、当社の再生がここまで進んできたのは、お客さまからの応援はもちろん、社員ひとりひとりの力と強い思いのおかげです。そしてリーダーに求められているのは、部下たちの意識をそこまで高められるかどうかです。1人の力で成し遂げられることは決して多くはありません。会社の成長も社会への貢献も、仲間と組織の力があってこそなのです。