TPPOSの観点で昭恵夫人のドレスを分析

しかし大事なのは【日々】の積み重ねがあって【いざ】というときに恥をかかないということ。日々のドレスコードをどう考え実践するか? 石津謙介氏が2005年、93歳で亡くなられてから私はドレスコードの進化のために、新たな概念をプラスして提唱しています。TPOにP(Person:人、相手)S(Social:社会性・背景・公共)を加えて、毎朝、その日に会う人たちのことを考え、その社会性、背景までをも想像して、日々のドレスコードを構築するのです。

この概念から、昭恵夫人の装いについて考えてみましょう。TPPOSを考えるということは、【その場に相応しい服装】を自分の独りよがりで考えるのではなく【その場の空気を共にいる人と作り上げる】ことを気遣い、自分がその一員であることを自覚した上で【服装からその場の価値を上げる】ことを目指します。

その空気とはどういう空気なのか? 自分がいることで、その場の空気を乱してはいないか? 自分がいることでその場の価値を下げてしまってはいないかと自問します。その場の価値を上げるときも、浮かずしてそれができることが理想です。

まず、即位礼正殿の儀の日のドレスコードは、内閣総理大臣決定として発表された「即位礼正殿の儀の細目について」では、「ロングドレス、デイドレス、白襟紋付きまたはこれらに相当するもの」ということでした。昭恵夫人のドレスはデイドレスではあったものの、明らかにお一人だけが浮いており、その場の空気を皆で作り上げるというより他の参列者の輪を乱してしまったといわざるを得ません。

色もデザインもNG、極めつきは……

具体的に説明すればまず、色。ホワイトは洋装の色の格式の中でも最も高く、明度の高さからしても主役以外がまとえば、主役を脅かす存在となり、目障りともいえます。ウエディングシーン等においても花嫁さんと同じ白は着ない、などの基本があるように、即位礼正殿の儀においても、相応しくないお色目なのです。

またデザインは袖口にかけて広がる釣り鐘型の袖。ベルスリーブといいますが、こちらは現在の若い人たち中心のトレンド感が満載です。即位礼正殿の儀はトレンド感が全く必要のないシーンであり、そこで作るべき空気はトレンド感のような軽いものではなく、厳かで気品漂う空気だったのです。

その空気をすさまじく壊したのがスカート丈でした。座ることは想定されていたはずですし、靴のヒールは必要以上に高く、さらに丈の短さが強調されて万歳三唱の際のお姿は目を覆いたくなる気分に。周囲のお着物姿の方々との極端な違いは品格を欠き、場への配慮を感じられませんでした。

ドレスのブランドは日本ブランド「ツグエダユキエ」のオーダーメードですが、今年8月のアフリカ開発会議用にと、あつらえたものなのだそうで、そうなると着まわしをされたことになります。着まわしは働く女性にとって、日々のビジネスシーンでは最も鍛えてほしいところなのですが、即位礼正殿の儀においては、ご新調なさるべきでした。