買い物でかえって疲れる休日

商店街のスピーカーからは、音楽やお買い得商品についての宣伝、値引きのお知らせが切れ目なく流れる。日本で商売をする人たちは、「商店街やデパート、スーパーがシーンとしているのは辛気くさい」ため、スピーカーからの音でにぎやかにした方が良いと考えているようだ。家族を連れてショッピングに出かける年配の市民は、この騒音と人混みだけで疲れてしまうのではないだろうか。絶え間ない音楽や宣伝文句の洪水は、神経を疲れさせる。これでは、何のための休みなのかわからない。

これは日本に限らず、香港や中国、シンガポール、タイでも見られる現象だ。香港の繁華街・銅鑼湾(コーズウェイベイ)の巨大なショッピング・モールを歩いていて、私は新宿の歌舞伎町や渋谷センター街の喧騒を思い出した。「休みの日のショッピング好き」は、アジアに共通した娯楽である。

アジアに出張や駐在で滞在しているドイツ人の中には、週末の喧騒にげんなりする人も多いようだ。多くのドイツ人は新宿や渋谷など東京の繁華街を「巨大な消費の殿堂」と見ている。

高い日本人の“ストレス発散費用”

なぜ、日本では消費を娯楽としている人が多いのだろうか。

私は自由時間が少ないためだと考えている。会社での仕事が忙しいために、自分が自由に使える時間が少なくても、買い物ならば比較的短時間で行える。

ドイツ人のようにいつでも休みを取ることができ、しかも毎年2~3週間の休みを取れることがわかっていれば、心のゆとりが生まれる。したがって、ドイツ人の間にはふだんの娯楽にお金をかける人、消費で心の隙間を満たそうとしている人は比較的少ない。2~3週間の旅行にはお金もかかるので、ふだんは多額の出費を抑える必要もある。

つまり、我々日本人はまとまった休みを取れないこと、労働時間が長いことによって溜まるストレスを、パーッとお金を使うことで発散しているのではないだろうか。