職場トラブルの最大の原因とは
コミュニケーションという言葉はラテン語のcommunis(共有する)が語源になっており、本来はお互いの考えやイメージが共有できてこそ成り立つ。そもそも、コミュニケーションがうまくいかない原因は何であろうか。
我々は誰かとコミュニケーションする際、頭の中にあるイメージを言葉で表現し、相手はその言葉を聞いて解釈することで頭の中にイメージする。ところが、お互いの持っている知識、経験などコミュニケーションの前提に違いがあると、頭の中のイメージに食い違いが発生し対人トラブルを引き起こす。
池田謙一(2000),「社会科学の理論とモデル5 コミュニケーション」東京大学出版会.を参考にした。
ビジネスシーンにおけるトラブルはコミュニケーション前提の違いによるものが多い。例えば、中途社員の受け入れ、他部署との交渉、経営者の交代などの際には、前提としている知識や経験が異なることが多い。すると「前の組織と比べてここは遅れている!」「来たばかりでうちのことを分かっていないんだ!」と反目しあうことになり兼ねない。日常やりとりする相手と自分の前提の違いを意識することこそが重要になる。「これは経費で落ちません」の登場人物を事例にして考えてみよう。
モンスター1
“平等とルール”最優先タイプ
麻吹美華(江口のりこ)―平等とルールを貫く経理部員―
帰国子女で外資系企業に勤めた影響で、時々会話に英語が飛び出す。自分を隠して人に合わせるのが苦痛で、これまでに7度転職している。彼女には「平等とルールが仕事において何よりも重要だ」という前提があった。そのため、特例での非効率な作業など会社の慣習に対してことごとく異議を唱え、部内外に波紋を呼ぶ。しかし、次第に「人は成長し変われる」ということを信じるがゆえの言動であることが周囲に伝わり、彼女自身も会社の慣習に理由があることを理解することで和解していく。
麻吹のケースは転職時に企業カルチャーの違いに悩んだことのある人は身に覚えがあるかもしれない。長期間、組織に属していると知らずしらずのうちに決まった価値観が醸成され、暗黙のルールができあがっていく。実は、ルールの背景を再確認する意味でも他文化を経験してきた人材の中途採用には意味がある。また、新たな組織に参加する側は一見不合理に見えるルールにも前提があるということを意識し、それを知ろうという姿勢が新しい組織に受け入れられるコツにもなる。