積極的に加入すれば、頑張って稼ぐようになる

その意味では、目の前の手取りが減ったとしても、積極的に厚生年金に加入した方がいい。たしかに教育費や住宅ローンの返済などを考えると手取りが減るのは困るが、実は、厚生年金が適用になった人は、もっと頑張って働くようになった人が少なくない。

過去の適用拡大によって働き方を変えた人は約16%。そのうち、「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える、維持できるよう、所定労働時間を延長した(してもらった)」という人は約55%にのぼる。中には、正社員にしてもらった人(1%)、適用される企業に転職した人(2%)もいる。適用されないように労働時間を減らした人も33%に達するが、大半の人は、厚生年金に加入することに積極的で、手取りが減らないように仕事に力を入れた、というわけだ。

その傾向は、夫が会社員で、それまで保険料がかかっていなかった3号の人でも同様である。

病気や障害者になった場合の保障も充実

厚生年金加入となった人は、前述のとおり、健康保険にも自身で加入することになる。

健康保険では加入者の収入によって1カ月の医療費の自己負担の上限額が決まる「高額療養費」という制度がある。夫が世帯主で収入が多いと上限額が高めになり、それが妻にも適用されるが、パートで収入が多くない妻が健康保険に加入すると、妻の医療費については上限額が低くなる。一般的な会社員では8万円強が上限だが、月収が26万円以下なら5万7600円が上限だ。

また健康保険には、国民健康保険にはない、「傷病手当金」がある。病気やケガで継続的に仕事を休んだ場合、4日目から最長1年6カ月まで、収入の3分の2が健康保険から支給される制度である。

障害者になった場合は「障害年金」の給付も受けられるが、これも、国民年金加入者より、厚生年金加入者の方が手厚い。

事情が許せば、たくさん稼いで、保険料を払って、しっかり保障を確保する。それが私のおすすめだ。

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井戸 美枝(いど・みえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)

関西大学卒業。社会保険労務士。国民年金基金連合会理事。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください 増補改訂版』(日経BP)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)、『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)など著書多数。