『救急車が来なくなる日』の著者でジャーナリストの笹井恵里子さんは、救急車の現場到着時間と病院収容時間が年々延びていることを明らかにした。そして救急車だけでなく、その先の医療現場でも混乱が起きている――。

※本稿は笹井恵里子『救急車が来なくなる日』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

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救急医療の現場への負担

あらためて強調するまでもなく、日本は高齢化の一途を辿っている。それに伴って、高齢者の救急患者が増えているのは言うまでもない。さらには、家族の「介護疲れ」が背景にある高齢者の問題も、救急医療の現場に負担がのしかかっているのが日本の現状だ。

こうした状況のなか、高齢者はどうすれば救急の現場を混乱させず、適切なタイミングで必要な医療を受けられるだろうか。

高齢者の立場からすると、体調が悪い時に自分一人で病院に向かうことは難しい。かといって、ほかに手伝ってくれる人もいない。そんな時に、救急車を呼ぶ以外の方法で、どうやって病院に向かったらいいのかわからないだろう。

米国では、救急救命士の資格を持つ者が現場に行き、傷病者の状態を見たうえで、救急車が必要か、介護タクシーを使うかの判別を行っている。しかし、日本国内ではやはり患者任せになったままである。