美男美女はブスを叩かない

——不思議なのですが、生まれながら容姿に恵まれた人は、他人の容姿を何とも思っていない傾向があると感じます。

私もそれは経験的に感じますね。仕事で会った人や友達を見ても、「イケメン」や「美女」と言われる人は、あまり容姿差別をしない。意外と相手の顔を気にしていない。たぶん、恋愛にも困っていないから、会う人、会う人、恋愛対象になるかどうかをそんなに吟味しないんじゃないかな。

山崎ナオコーラ『ブスの自信の持ち方』(誠文堂新光社)

自分に自信を持てない普通の人が、ブスが自信満々で表舞台に出ているのを見て「なぜ?」と感じ、叩きたくなるのかもしれません。仕事や人生にストレスを抱えてたり、自分に自信を持てずに悩んでいたりする人が世間に多いんだろうなと思います。

——表向きでは、容姿に関して言及するのはとにかくダメという風潮もありますね。

10~20年くらい前は、メディアも「ブス」や「美人」をいじっていい世界だった。それが「容姿差別はダメ」という認識が広がってきたとたん、「とりあえず使わないようにしよう」「面倒なコミュニケーションは避けよう」と、容姿に関するフレーズはカットされてしまうようになった。今は過渡期だと思うので仕方ないことではあるんですけど、最終的には、「『ブス』や『美人』という言葉は気兼ねなく使いながらも、容姿差別はしない」という世の中を目指せればいいですね。

構成=新田理恵 撮影=市来朋久 写真=iStock.com

山崎 ナオコーラ(やまざき・なおこーら)
作家

作家。親。性別非公表。『人のセックスを笑うな』でデビュー。著書に、育児エッセイ『母ではなくて、親になる』、容姿差別エッセイ『ブスの自信の持ち方』、契約社員小説『「ジューシー」ってなんですか?』、普通の人の小説『反人生』、主夫の時給をテーマにした新感覚経済小説『リボンの男』など。