教育環境を整えるため、行政に働きかける存在

「親達の組織」は市民団体なので、現在の状況や政策に影響を与えるのは重要な役割である。たとえば、給食に関しては、食材などをチェックし希望を出す。通学路に危険な場所がある場合、車の走行速度をおとしてもらう。校庭の照明を増やすよう求めるなどである。自治体の動きが遅い場合は、照明会社と提携することもある。ランゲージ・シャワーも、よく課題になる。ラングゲージ・シャワーは、歌やゲームで外国語を学ぶこと。フィンランド語を母語とする保育園児・小学校低学年生が、スウェーデン語を学ぶのが普通のケースだが、希望があれば他の言葉の学習を要請する。

また、学校内の空調の問題は、最近の大きな関心事である。こうした課題については、校長や先生、有力な市議会議員、市の委員会役員などをミーティングに呼んで話し合っているという。

“地域”ではなく、専門的な組織と協働する

小中学校では、教科書と教材が無償だが、高校と職業学校では、教科書と教材を自費で買う必要がある。「親達の同盟」は、その無償化を現在求めている。それは、セーブ・ザ・チルドレンをパートナーにして行っているという。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利向上のための国際的なNGOで、フィンランドにも支部がある。

「親たちの同盟」は、さまざまな市民団体をパートナーにしている。セーブ・ザ・チルドレンの他、フィンランド家族連合、高校生同盟、マンネルヘイム子ども保護同盟、児童保護中央同盟、職業学校生徒団体、校長同盟、地方自治体同盟、学校心理学者の組織、社会保健関連の組織など幅広い。フィンランドには、市民組織が非常に多いと言われる。政党、職業的集団、さまざまなリクリエーション・趣味・スポーツの組織、文化的、社会的、慈善活動の組織など多様である。「親達の同盟」と「親達の組織」もそれらと同等の立場にある市民組織である。

日本では「学校・家庭・地域」と言われるが、フィンランドで地域という概念は希薄で、教育には関わらない。関わるのは、上記のような専門的な組織や団体で、「親達の同盟」と協働している。