全国の社員との対話の際、テーマに、企業風土変革やダイバーシティ推進だけでなく、年金、介護、結婚などあらゆることを俎上そじょうに載せる。だから、新聞の切り抜きはネタの“引き出し”に。「もちろん相手は社員だけではありません。どんなときでも、どんな人とでもきちんと対話ができるように、常に情報を蓄えておく必要があります」

インプットした情報は、平易な言葉で整理整頓

高崎さんは講演会、勉強会などでトップマネジメントや著名な大学教授など、さまざまな人から話を聞く機会も多いが、それも“引き出し”になっているそう。習慣化しているのは漫然と話を聞くのではなく、話を聞いた後に、内容を整理整頓した「まとめノート」を作ること。

働き方改革、ダイバーシティ関連の新聞記事の切り抜きはクリアファイルに入れて(左)。「まとめノート」は膨大な数になった。

「メモも取りますが、そのまま放っておいてはダメ。せっかくのいい話を忘れてしまうので、講演を聞いたその日に作ります。心に響いた言葉、自分の琴線に触れたフレーズを抽出して、私なりに言葉を足して膨らませてまとめ書き。もっとテーマを深掘りしたいときは、ネットで検索して情報を拾って追加します」

いつか誰かに話すかもしれないので、客観的な視点で内容を整理整頓しておく。そうでないとそのトピックスを他人に明確に伝えられない。そしてできるだけ平易な言葉で表すこと。難しいことを難しく説明するのではなく、小学生にでも理解できる言葉に変換することが大事だ。

「今では当たり前のように使っている“ダイバーシティ”や“イノベーション”という外来語もそう。今さらですが『これは一体どういう意味なのか?』とあらためて考え、相手にちゃんと響く言葉になっているかどうかを突き詰めます」

社員一人ひとりの幸福と会社の持続的な成長を両立できるように、“言い続ける、やり続ける、諦めない”姿勢で取り組み、そのための施策をどんどん実行していきたい。やりがいのある仕事なので、自ら働き方改革を実践し、テレワークなどを利用しながら携わり続けたいと語る高崎さん。「時間ができたら、映画もたくさん見たい」と願うが、まだまだ先のこととなりそうだ。

(左)管理職のバイブル。部下のほめ方や間違いの正し方まで解説する。(中)マンガ版は長女と一緒に読み、感想を共有した『LIFE SHIFT』。(右)ポジティブシンキングの高崎さんが「同じ考えだ!」と思った2冊。
▼高崎さんの学びを振り返る!
【20代】歴史、経済、語学、働き方改革、雑学などを学ぶ。新聞の切り抜きを始める。講演会等でインプットした情報や知識をオリジナルでまとめる「まとめノート」を始める
【30代】異業種交流会に参加。普段出会えない人々と交流を深める。
高崎邦子(たかさき・くにこ)
JTB 執行役員
1963年生まれ。関西学院大学法学部卒業後、現JTBに入社。教育旅行、法人旅行など、日本と世界各国への出張添乗業務に携わる。CSR推進部長、教育旅行神戸支店長等を経て、2018年より現職。

撮影=村林千賀子

東野 りか
フリーランスライター・エディター

ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。