8時間労働でワークライフバランスは難しい

現在の1日当たり労働時間別に見た満足度では、労働時間数が少ないほど満足度が高い。労働時間が4~6時間の人の満足度は40~50%前後であるが、7時間になると、30.2%、8時間は24.0%、9時間以上は18.6%と下がる傾向にある。つまり、一般的な正社員の労働時間の8時間ではワークライフバランスを維持するのは難しいということになる。

さらに現在の1日当たりの理想の労働時間は回答者全体では「4時間」(18.2%)が最も多く、続いて「5時間」(17.0%)が多かった。

このことから言えるのは、ワークライフバランスを保つには4~5時間の労働時間が理想的ということだ。しかし、一般的な日本企業では最低でも1日8時間働かないと正社員にはなれない。4~5時間では非正規での雇用しかなく、しかも報酬は極めて少ない。4~5時間働いても子育てなどの家事は可能になるが、夫の収入を含めても生活水準は低くならざるをえないのが現状だ。

30分単位で労働時間を選べる正社員制度が登場

給与は低いが、短時間の非正規社員に甘んじるしかない現状を変えていくにはどうすればよいのか。やはり「短時間正社員制度」を日本の企業社会に位置づけることである。出産・育児あるいは介護などのライフイベントで8時間労働が難しい人の選択肢として5~6時間働く「正社員」として処遇も保障する。そして育児・介護を一定程度終えたら再びフルタイム勤務にスイッチできるような柔軟な運用が望ましい。そうなれば親の介護に悩む男性の介護離職も減るだろう。

たとえばクレディセゾンは2017年9月に「全社員共通人事制度」を導入。非正規社員全員を正社員にしただけではなく、従来の非正規の1日労働時間5.5~7.5時間の働き方を全社員に適用した。これにより旧総合職社員も5.5~7.5時間の範囲内で自分の1日の労働時間を30分単位で選択できるようにしている。こうした柔軟な働き方が広がると、働く意欲のある女性も増えるのではないか。

女性就業者が3000万人を超え、女性就業率が欧米並みになったといっても、決して本当の女性活躍が進んでいるわけではない。働く女性が希望する選択肢が極めて乏しく、結果的に低賃金の女性就労者を増やしているにすぎない。見かけだけの数字に小躍りして喜ぶのではなく、より積極的に働きたい、あるいは自らのキャリアを高めたいという意識が持てるような働き方を提示していくべきだろう。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。