配偶者手当をカットする企業も増加

その背景には65歳までの雇用延長が義務化されたことで高齢社員の人件費を捻出するために40代以降の賃金を削減したり、あるいは従業員の高年齢化に伴って管理職のポスト不足が顕在化し、昇進できなくなっているという事情もある。

加えて賃金制度改革による配偶者手当の削減である。1990年代後半以降の成果主義賃金への移行、年功型賃金から欧米流の職務給への移行に伴い、仕事と関係のない属人的手当が廃止される傾向にある。たとえば扶養手当は大企業であれば、配偶者(妻)2万円、子ども一人つき1万円程度を支払っているところも多かった。

最近では子ども手当については国の少子化対策もあって減らすところは少ないが、配偶者手当をなくす企業も増えている。手当が2万円減るだけでも家計には痛手だろう。

家計収入を補てんするために専業主婦をやめて働きに出ても生活が楽になるわけでもない。その多くが低賃金の非正規社員である以上、それほど収入増が望めないからだ。女性の非正規社員の平均年収はフルタイムであっても188万円(2018年)と200万円に満たない。短時間のパートであればもっと低くなる。

隠れ専業主婦が増える理由2:正社員になりたくない人々

では正社員になればよいのではないかと思う人もいるだろう。もちろん単身者で正社員になりたいのになれない“不本意非正規”もいるだろうが、子どもを抱える非正規の女性の中には必ずしも正社員を望んでいる人ばかりではない。とくに小売業や飲食・接客業の人事担当者からは「正社員にならないかと誘っても、今よりも責任が重くなること、長時間働くことを嫌がる人が多い」という話をよく聞く。

長時間労働に関しては所定労働時間の8時間を過ぎても残業をしている正社員が多いのを見てそう思うのだと言う。労働時間に関して興味深いデータもある。

生協総合研究所が生協の組合員に実施した「2017年組合員モニター調査」(2019年5月)では、ワークライフバランスの満足度を調べている。女性組合員の雇用形態別のワークライフバランスでは「満足している」人が「正規雇用」が26.9%、「扶養控除の枠(約130万円)を超えて働くパート・派遣など非正規」は「満足している」が35.0%となっている。満足度は非正規がやや高く、また正規雇用の56.1%が「今よりも生活にウエイトを置きたい」と答えている。