転勤は減らせるのか
子どもにとっても元々よくない制度ですし、専業主婦の方であっても、男性が単身赴任になって、もし一人で子育てをすることになったら大変です。ですから、昔ならば転勤がすんなり受け入れられていた、というわけではないと思います。共働きが増えたことによって、転勤の問題が先鋭化したのではないでしょうか。
会社が転勤をさせる理由としては、人材育成と人員調整の2つの意味があります。人材育成を目的として転勤をさせている企業ならば、工夫次第で減らせると思います。しかし、人員調整でやっている場合は、転勤を封じられると解雇が生じるので、難しい問題となるでしょう。ある部署で人がだぶつき、ある部署で不足していた場合、日本では配置転換と転勤でなるべく解雇をしないようにします。ですから、転勤がどこまで減らせるかは、現時点では未知数です。
配置転換もキャリア形成の妨げに
配置転換も、人員調整の有力な手段になっていますが、女性のキャリアにとってネガティブな要素だと私は思います。ジェネラルスキルばかりが身に付いて、その会社では有利になるかもしれませんが、専門性は身に付きません。ですから、転職や再入職した時に給料がリセットされてしまいます。子育てで一度キャリアを中断して、次に新しい職に就いた時に、「今までいろいろやっていましたが、特定のスキルは身に付いていません」ということになってしまう。それに「どうせ異動する」と思うと、部署で取り組んでいる仕事に対する思い入れが無くなり、モチベーションも下がるかもしれません。
海外はプロフェッショナルスキルが身に付きやすく、例えば経理ならずっと経理の仕事に就くことができます。転勤もほぼありません。人員調整を企業内部の転勤や配置転換によって行うことを「内部労働市場」といいますが、それと対象的なのが「外部労働市場」です。職場や事業所で人が足りなくなったら、その近くに住んでいる人員を、必要な期間だけ雇います。企業間で人材が共有されているようなイメージです。
日本の企業では、突然全く経験のない部署に配属させることが多々あります。配置転換をする理由は、人材育成や人員調整という目的以外に、癒着などの防止のためという会社もありますが……。女性のキャリアを考えたとき、これらを配置転換以外の方法で対応するという方法をきちんと考えるべきでしょう。