そもそも、男女平等を目指すべきなのか

私の考えとしては、特段のデメリットがなければ男女平等に近づけていくべきと思っています。ケア役割やハラスメント問題に対する配慮に関しては、男女で大きく違っているのが現状です。ただ、より多くの女性が責任のあるポジションに就くことで、こうした問題が改善されていく可能性があります。

もちろん例えば独身でバリバリ働いている女性が管理職になった時に、子育て中の人への配慮が進むかどうかは、ケース・バイ・ケースでしょう。「男性的」な考えの女性が管理職になり、ケア責任を負わされる人を冷遇してしまう可能性もあるからです。しかし、もちろんそういう人が出世してはいけない、というわけではありません。いろんな生き方をする人がいますので、すべての人が公平に思える制度設計をすることは不可能ですが、特定の生き方を露骨に優遇することを避け、ストレスを減らしていくことを目指すべきです。

転勤が問題になり始めてまだ2~3年

なぜこんなに共働きや女性管理職の増加が遅いのかについて、私が考える理由は2つあります。

1つ目は、日本的雇用。日本の大企業で出世しようと思うなら、転勤・配置転換・長時間労働を受け入れる前提になります。特に、今年19年6月に炎上したカネカの件のように、転勤を受け入れるのは大変です。夫も妻も転勤ありの会社で子育てをするのは難しいでしょう。しかし、会社は容赦なく転勤を命じることが割とよくあります。

専門家は以前から指摘していましたが、世間的に「転勤は共働きにとって非常にきつい」という議論になったのは、ここ2~3年のことだと思います。共働きが徐々に目立つようになり、不満の声が大きくなってきたからでしょう。これまでは転勤を受け入れることはなかば当たり前でしたが、徐々に意識が変わってきています。