チャンスをつかむ“度胸”を備えて

帰国したのは、2011年の東日本大震災がきっかけです。当時は日本がどうなっているのかなかなか情報が入らず、被災地に夫の親戚がいたこともあって不安な日々を過ごしました。この経験を通して、両親や大事な人たちと同じ国にいたいと思うようになり、家族で話し合った上で帰国することにしたんです。

そして帰国後に3回目の転職。ビジネスアプリケーションなどを手がける会社、セールスフォース・ドットコムに入社しました。購買部長として忙しく働いていましたが、そのうちマイクロソフトで一緒だった人から突然連絡をもらったのです。その人はコカ・コーラ イーストジャパンに勤めていました。

話を聞いてみると、「うちの社長に『右腕になる補佐役がいたら仕事が楽になりますよ』って言っているが、うまく説得できない。役員補佐経験者のあなたが説得してくれないか」と言うんです。気軽に引き受けて説得に行ったら、社長が「話はわかった、じゃあ君が来てくれ」と(笑)。これが4回目の転職で、そして今に至ります。私が補佐を務めた社長は、今はコカ・コーラ ボトラーズジャパンの社長になっています。

先ほども言ったように、今の私があるのは、その時々で引っ張り上げてくれたサポーターの方々のおかげ。ただ、それを生かすには、降ってきたチャンスをつかむ度胸を備えている必要があります。私が転職し続けられたのは、物怖じしない性格が幸いしたのかもしれません。これまで「やってみる?」と言われたら、どんな時も二つ返事で引き受けてきました。

やってみれば何とかなる、失敗しても何とかする。仕事もまた育児と同じで、「腹をくくる」ことが必要なのかなと思います。腹をくくるポイントは人それぞれに違うでしょうが、皆さんにもぜひ、その心意気を持っていただけたらと思います。以前、国際会議によく出ていた時のことですが、日本人女性は私ただ1人ということが多くありました。その少なさが悔しくて、こうした場に日本人女性を増やしたいと強く思ったものです。日本のコカ・コーラシステムで女性発の社長になった時も、この強い思いが後押ししてくれました。これは、今の私が自分に課しているテーマでもあります。

私の両親は共働きで、協力し合いながら育児をしてきました。今、私も妹2人も、子どもを育てながらしっかり働いています。両親の姿が私たちにどんなに影響を与えたか、今になってその大きさを実感しています。私の子どもたちも、私と夫の背中を見て自分の幸せを自分で見つけてくれたらいいなと願っています。

文=辻村洋子

荷堂 真紀(かどう・まき)
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 調達本部長 エグゼクティブビジネスマネージメント本部長

広島県生まれ。香川大学卒業後、日本電気株式会社入社。その後マイクロソフトなど外資系企業にて調達、経営戦略、営業、マーケティングなどを務める。2014年コカ・コーラ イーストジャパン入社。同年コカ・コーラ ビジネスサービス取締役、代表取締役社長を経て、コカ・コーラ ビジネスソーシングへ名称変更 代表取締役社長を務める。2017年コカ・コーラ ボトラーズジャパン執行役員 調達統括部長に就任。2019年2月執行役員 調達本部長に就任、6月より現職。