部下がマウンティング男だったら

では、彼らが女性上司を持ったらどうなるのでしょう。本人としては、プライドが許さず非常につらい思いをします。自分はひどい目に遭っていると感じて怒りをため込み、あら探しや嫌がらせに走る場合もあります。中には「女性活躍のおかげで昇進しただけで、ただのお飾りだ」などと言う人もいるかもしれません。

もし部下にこういう男性がいても、彼らのペースに巻き込まれないでほしいと思います。男性以上に頑張って認められようと思う女性もいるかもしれませんが、会社に実力を認められた結果としてそのポジションを任されているわけですから、自分のペースを崩さないようにしてください。

彼らの独自ルールに合わせる必要はないのです。力むことなく淡々と接して、ハラスメントがあれば社内窓口に相談を。女性上司に向かって「お飾り」などと言うのはハラスメントですから、真に受けて悩んだり、じっと我慢したりすべきではありません。

競争社会を改善していくことが重要

そう言う人たちは「競争を煽られてずっと頑張ってきたのに割を食った」と感じています。女性や年下に負けたと思うと、いてもたってもいられず、鬱憤うっぷんを晴らす方法を必死に探します。その結果、本当に割を食うのは女性や年下の上司たち。このサイクルはいつまで続くのでしょうか。

現実的には、今も「競争社会の勝者=男らしい」という考え方や育て方が続いており、企業の学歴フィルターも健在です。男同士のマウンティングも女性上司へのハラスメントも、完全になくすにはまだ時間がかかるでしょう。今後は一人ひとりが男らしさへの意識を改め、競争社会を改善していく必要があると思います。

構成=辻村 洋子 写真=iStock.com

田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。