「子供が欲しいから」婚約破棄に
妊娠・出産については、ママ側の年齢だけが問題視されがちですが、パパ側の年齢は本当に関係ないか考えてみることにします。
私は、そもそも「男性は高齢結婚でも必ず子どもが授かる」といった発想そのものに大きな違和感を覚えています。それはまるで、コイン(=若い女性との結婚)を入れたら、おもちゃ(=子ども)がコロンと落ちてくる、“ガチャポンゲーム”のような発想だからです。「うちの中年息子に若い女性を」と思う男性の親にも、「コイン(=若い嫁)さえ手に入れれば、おもちゃ(=孫)が出てくる」と考えている人は少なくありません。
結婚相談所の支援者からはこんな話もうかがいました。
「40代前半の男性と40歳の女性が婚約までこぎつけました。40代で初婚同士の結婚はどちらにとってもなかなか難しいことですので、応援してきた立場の自分としては、本当に嬉しかった。それなのに、互いの親への報告の段階で、男性側から婚約破棄の申し出があったんです。『やっぱり子どもが欲しいから』と。悔しくて仕方がありませんでした」
こういったケースは珍しくないのかもしれません。しかし、新しい命の誕生は、ガチャポンゲームのように単純なものという発想そのものの真偽を確認しなければなりません。統計的に見て男性の年齢と出生率には何も関係がないならば妥当な考え方といえます。そこでこの本のテーマでもある「思い込みを統計的リアルで確認していく」ことにします。
出生率に強く影響する男性の「初婚年齢」
もし、「男性は高齢結婚でも関係なく子どもを授かることができる(女性さえ若ければ子どもを授かれる)」という“ガチャポン感覚”が正しいのであれば、日本の男性の結婚年齢と日本の子どもの出生率の間には統計的関係性が見られないはずです。少なくとも、女性の結婚年齢と出生率の関係性よりも、かなり低い関係性を示す統計結果となるでしょう。
まずは、男性側の結婚年齢データから見ていくことにします。【図表1】を見てください。
このグラフは、2016年のデータを扱っています。47都道府県の男性の平均初婚年齢が縦軸、そのエリアの出生率が横軸となっています。
相関分析という手法を用いると、両者の間には非常に強いマイナスの関係性(「-0.70」という数値)があることがわかりました。マイナスの関係性ですので、男性の初婚年齢が上がるほど、出生率は下がってしまいます。
つまり、男性の結婚年齢は、子どもを授かるため(出生率が上がるため)には、きわめて大切な要素になっている、という分析結果です。統計的には男性の初婚年齢が上がるほど出生率は激減しているわけですから、これまで女性に対していわれてきたことと同じ論理で、「何がなんでも子どもが欲しいと思うなら、高齢パパを選択しないほうがいい」という結論になります。