負担を上げるか、給付を下げるか

財政検証では、この所得代替率がどの程度になるかを予想する。

まず前提として知っておきたいのは、年金は現役世代が高齢者を支える仕組みであり、少子高齢化が進めば財政は厳しくなる。多くを支給しようとすれば現役世代の負担が重くなってしまう。

そこで過去の年金改革では、年金保険料の引き上げは一定のところでストップすること(厚生年金18.3%など。すでに上限に到達している)、支給額は物価や賃金の上昇幅より年金の引き上げを抑制するマクロ経済スライドという方式をとることで、給付と負担のバランスを調整することが決められた。

このように、年金を受け取る側と支える側、言い換えれば、年金の支給額と保険料の両輪で年金制度を考えなければならない。

現在37歳の人の年金は、現役の人の賃金の約半分

年金制度は、受け取る側と支える側のバランスや、年金に加入する人の割合や保険料収入の規模、保険料の運用成果などの影響を受ける。そこで財政検証では、将来推計人口、経済成長、労働参加などを想定して6つのパターンで検証が行われた。

そのうち、私が基本のケースと思うのは、ケースIII。経済成長と労働参加が進むケースで、物価上昇率は1.2%、賃金上昇率は1.1%、経済成長率0.4%といった想定である。

その場合、今から約28年後にあたる2047年の所得代替率は、50.8%の見込みとなる。

ちなみに、もっとも悲観的なシナリオ(実質経済成長率0%)では50%、楽観的なシナリオ(実質成長率0.9%など)でも51.9%である。

それが2047年に65歳(現在37歳)の人の平均的な年金水準として見込まれる、ということである。

所得代替率が現行の61.7%から50%程度に下がると、実際にはどの程度の影響があるだろうか。

総務省の家計調査などをベースにすると、高齢者世帯では平均的に年金では月額5万円程度、生活費が不足する状態である(「老後2000万円、本当に足りないのは誰か」を参照)。

50%程度に下がれば、さらに不足額が大きくなる。

あくまで平均だが、現役の賃金35.7万円の50.8%では、年金額は約18万円。毎月の不足額は約9万円となる。