女性を増やした先に何を求めるのか

「あらゆる局面で女性を増やすことに表立っては反対できないのが今です。最初は社会正義だから女性を増やそう、次は企業を説得して女性を増やそうとしてきた。必ず儲かることもわかった。でもそれだけでなく、女性を増やしてどうするのかという、その先の話をしたいのです。『望ましい社会』のためにです。安全なもの、子どもに優しいものが欲しい。何が望ましいのかを考えないといけない。ただ女性を増やすだけでいいのでしょうか?」

ジェンダー平等は持続可能な社会や企業の条件として、海外の機関投資家に注目されている。日本でも「なぜあなたの会社には女性の役員がいないのか?」と株主総会で機関投資家からの質問が飛ぶぐらいである。確かに時代は変わったが、何のためにジェンダー平等達成を目指すのかの本質を、上野先生はいつも突きつける。

これからもやっていくしかない

「半世紀同じことを言ってきました。いまあなたたちお茶汲みしている? していないでしょう? 誰のおかげか、思い出してね。男が嫌がることを言い、男からの嫌がらせを受けながらずっとやってきたから、今があるのです。それを今度は若い人に手渡さなければいけない。一人ひとりの現場で戦ってきた、NOと言ってきた人が変えてきました。これからもやっていくしかないと思います」

そう締めくくった上野節に会場は拍手喝采。佐々木かをりさんは涙を流していた。経済の分野で、男性の中のごく少数の女性としてやってきた人たちが会場の大半である。彼女たちは上野先生と同じやり方ではなかったにせよ、その場その場での、それぞれの戦いがあった。だからこそ、上野先生の言葉は満場のキャリアウーマンの心に響くのだと思う。

上野先生は「ポジションを取った者」のあり方を、今教えてくれているのだと思う。そして今後はどう次の世代につないでいくべきなのかを。