18歳でも“おじさん”がいる

ファシリテーターの大門小百合さん(Japan Times)に東大入学式でのスピーチまでの経緯を聞かれ「最初は悪い冗談かと思って断ろうと思った」と上野先生。チャーミングでユーモラスな語り口に、会場全体が笑顔に変わる。

「私は変わっていないんです。変わったのは東京大学。#Metoo、東京医大の入試差別問題などいろいろなことが起きて変化が起きました。スピーチには40代女性が熱い反応を示してくれて……みなさん、つらい思いしたのね。一方18歳男子でもおじさんは再生産されていると思いました」

東大の女性割合は2割を超えず、東大男子学生の52%が中高一貫男子校の出身だ。そのことも「上野スピーチ」への男性からの反発の要因となったかもしれない。

東大は入試差別をしていない。女性が増えないのは、女性の応募者が増えないからだ。今年の応募者数は28%。

なぜ202050ではないのか

「企業も応募者と採用者の男女比率を情報公開してほしい。202030はなぜ202050ではないのでしょうか?」

上野先生が問題提起を会場に呼びかけると多くの人がうなずいた。働く女性である私たちは、ずっと企業の経営者から「成績順に取ると全部女性になっちゃうんだよね。だから男性に下駄げたを履かせて取っている」という話を聞いているからだ。企業が男女比のコントロールをしているのは公然の事実。ずっと目の前にあったのに、誰も声を上げてこなかった差別だ。

なぜ上野先生が経済会議に登場するのかといえば、今「ジェンダー平等」は経済の重要トピックとなっているからだ。大阪で開催されたG20は経済の要素が強い首脳会議だが、今年(2019年)の「G20大阪首脳宣言」には「ジェンダー」という単語が6回、女性という単語は23回も出てきた。そんな風潮に上野先生は疑問を呈する。