日本が子育て環境の改善を目指すうえで参考になりそうなのがドイツだ。ドイツでは一昔前まで「子どもが3歳になるまでは母親が家庭で育てるべき」という価値観が根強く、女性の社会進出の妨げになっていた。そこへ、政府が夫の育休取得に対してインセンティブを与える制度を導入すると、男性の育休取得率は急上昇。男性の育児を本気で推進することで、女性が安心して働き、子どもを産み育てやすい社会を目指す国の姿勢は、日本もぜひまねしたいところだ。

米国の働くママは、無給で休業する場合が多い

他方、産休・育休制度の分野で、他の先進国から大きく後れを取っているのが、米国である。大前提として、米国には有給で産休・育休を取得できる公的制度が存在しない。

フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏と、妻で小児科医のプリシラ・チャン氏。夫妻の間には子どもが2人いるが、2回ともザッカーバーグ氏が長期の育休を取得したことで話題に。(写真=AFLO)

「国の法律では『出産後12週間休業する権利があるので、企業はその間、休業した従業員を解雇してはいけない』と定めているものの、休業給付の規定はない状況です」

ただ、近年は州レベルで有給の産休・育休制度の整備を進めるほか、民間企業が独自の社内制度として設ける動きも。たとえば、トップ自らが長期の育休を2回取得して話題になった、フェイスブックがその筆頭に挙げられる。

しかし、まだそうした制度を設けていない企業のほうが多い。多くの米国人女性は産前ギリギリまで働いてから出産し、無給での3カ月の休業を経て、職場復帰する。経済的に余力がない場合などは、体が回復しきらないうちに、すぐさま職場復帰する女性も少なくない。

米国の17年の出生率は1.76と過去30年で最低レベルに。先進国では高いほうだが、危機感を抱く向きもあり、州レベルにとどまらない対策を望む声も出ている。