産休や育休の制度が整っているか――企業で働く女性が出産するとき気にすることのひとつです。日本では女性の社会進出が進むにともない整備されてきましたが、ほかの国はどうでしょうか。女性活躍の先進国アメリカをはじめ、北欧やヨーロッパの制度を見てみました。

スウェーデンは夫が育休を取らないと損

働きながら子どもを産み、育てる夫婦にとって、産休(産前産後休業)や育休(育児休業)制度が重要な意味を持つのは万国共通。人種や国籍に関係なく、出産前後の女性は一定期間仕事を休まざるをえない。その期間に収入がゼロになると、場合によっては死活問題に発展する。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Yagi-Studio)

日本では、会社員などが産休・育休を取得するにあたり、社会保険から出産手当金や育児休業給付金が給付される。日本以外の国にも産休・育休制度はあるが、国ごとに内容は異なる。先進国は女性の社会進出を支え、子どもを産み育てやすい社会をつくるため、公的な産休・育休制度の充実を図る国が多い。

「特に欧州では、産休・育休制度が充実している国が目立ちます。たとえば、『世界で最も子育てしやすい国』といわれるスウェーデンでは、給付金がもらえる育児休業が子ども1人につき夫婦合計で480日、そのうち390日は、給料の約80%が給付されます」

そう話すのは、雇用政策・家族政策に詳しいリクルートワークス研究所主任研究員の大嶋寧子さん。これだけでは日本と大差がないようだが、スウェーデンの産休・育休制度がユニークなのは、夫婦のどちらか一方だけでは、休業期間を使いきれない仕組みになっている点だ。

「390日のうち最低90日間は夫が休業しないと、その分の有給休業の権利が消失します。つまり、夫が休まないと損。『パパクオータ(割り当て)制度』と呼ばれていますが、これがあるおかげで、スウェーデンの男性の育休取得率は、実に90%を超えています」

日本の男性の育休取得率は、2017年度に過去最高となったが、それでも5.14%。スウェーデンと比較すると、かなりの差がある。

男性が子育てする時間が短すぎる日本

長い育休を取得するスウェーデンの男性は、家事・育児にも積極的に参加する。内閣府の調べによれば、6歳未満の子どもを持つ男性の家事・育児関連時間(1日あたり、国際比較、16年)は、日本だと平均1時間23分だが、スウェーデンでは3時間21分にも上る。ほかにも米国やドイツなどが3時間以上なので、スウェーデンが突出して長いわけではないが、日本の短さは際立つ。

「日本の産休・育休制度の内容は、世界でも比較的充実しているほうです。ただ、日本の男性の育休取得率の低さや、家事・育児への関わりの少なさを考えると、夫の育児参加が進むスウェーデンなどのほうが、働く女性にとって子育てしやすい環境と言えるかもしれません」

日本が子育て環境の改善を目指すうえで参考になりそうなのがドイツだ。ドイツでは一昔前まで「子どもが3歳になるまでは母親が家庭で育てるべき」という価値観が根強く、女性の社会進出の妨げになっていた。そこへ、政府が夫の育休取得に対してインセンティブを与える制度を導入すると、男性の育休取得率は急上昇。男性の育児を本気で推進することで、女性が安心して働き、子どもを産み育てやすい社会を目指す国の姿勢は、日本もぜひまねしたいところだ。

米国の働くママは、無給で休業する場合が多い

他方、産休・育休制度の分野で、他の先進国から大きく後れを取っているのが、米国である。大前提として、米国には有給で産休・育休を取得できる公的制度が存在しない。

フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏と、妻で小児科医のプリシラ・チャン氏。夫妻の間には子どもが2人いるが、2回ともザッカーバーグ氏が長期の育休を取得したことで話題に。(写真=AFLO)

「国の法律では『出産後12週間休業する権利があるので、企業はその間、休業した従業員を解雇してはいけない』と定めているものの、休業給付の規定はない状況です」

ただ、近年は州レベルで有給の産休・育休制度の整備を進めるほか、民間企業が独自の社内制度として設ける動きも。たとえば、トップ自らが長期の育休を2回取得して話題になった、フェイスブックがその筆頭に挙げられる。

しかし、まだそうした制度を設けていない企業のほうが多い。多くの米国人女性は産前ギリギリまで働いてから出産し、無給での3カ月の休業を経て、職場復帰する。経済的に余力がない場合などは、体が回復しきらないうちに、すぐさま職場復帰する女性も少なくない。

米国の17年の出生率は1.76と過去30年で最低レベルに。先進国では高いほうだが、危機感を抱く向きもあり、州レベルにとどまらない対策を望む声も出ている。

▼各国の制度を比較してみました