恋愛関係を親に“隠す派”も

【原田】じゃあ逆に、彼氏彼女を親に紹介しない、友達になんてなってほしくないっていう人はいるかな?

恋人ができても、親には言わない派の井上くん

【井上くん】僕は今まで、彼女ができても親に言ったことは一度もないです。もし言ったら、そのあと中間報告とか別れた報告とかしなきゃいけなくなると思うんですよ。それは面倒くさいから、だったら始めから言いたくない。もちろん友達にもなってほしくないです。

【原田】親に恋愛話を言うのが普通になっているから、逆に隠す子が出てきている、ということだね。昔だったら言わないのが普通だったけど。

【堀井さん】私も、母親には何でも話していますけど、彼氏ができてもそれだけは言わないと思う。絶対あれこれ言ったり聞いたりしてくると思うし、何よりも介入されたくないです。

【橋場さん】私も絶対言わない。きっと「写真見せて」とか言ってくると思うので、そんなの耐えられない(笑)。

友人の母親を呼び捨てにする女子たち

【原田】やっぱり抵抗を感じる若者もいるんだね。君たち3人は親と仲がいいのに、彼氏彼女に関しては徹底して「隠す派」という点が興味深いな。じゃあ、友達は紹介するのかな。母親が自分の友達と仲良くなったことはある?

【橋場さん】それはあります。周りには友達の母親を、下の名前で呼んでいる子もいます。小さい頃から知っていて信頼関係が築けている間柄になっているからこそ、呼び捨てで呼べるのだと思います。

「友人の母親を下の名前で呼び捨てにする子もいる」と橋場さん

【山本さん】私が仲良くしている元カレの母親も、私だけじゃなくて元カレの友達皆と仲がいいですね。女子だけってわけじゃなくて、男子の友達ともサシ飲みしたりしています。

【原田】ずいぶん距離が近いなあ。母親の意識も僕が若い頃とはかなり違うみたいだけど、若者のほうもそれに抵抗感がなくなっているっていう点が面白いね。皆のご両親はいずれも共働きで、職業は教員、公務員、パートとさまざま。そこから考えると、働く母親が若者とうまく付き合えるようになってきたのかな。

これからは、「母娘ではない40〜50代の女性と20代の女性」という組み合わせが増えるかもしれない。現に、山本さんや塩田くんの友人のケースのように、息子の元カノを誘ってショッピングに出かけて、服を買ってあげたり一緒に飲んだりする母親たちがいるわけですよね。母親も元カノも、お互いに一緒にいて楽しいからそうしている。今後、女性を対象としたマーケティングでは、友達の範囲が年齢や親子関係を超えて広がっている点にも注目する必要があると思います。

写真=iStock.com

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。