仕事は100%自分だけで。子育てはすべて公務員の夫任せ

90年代、上海の若い女性たちの間では欧米や日本のファッション誌が大人気だった。高継華(ガオ・ジーホア)さんもその華やかな世界に魅了された1人。特に誌面を飾る写真の数々に引きつけられたという。名門大学卒業後、憧れの日系出版社の上海支社にグラフィックデザイナーとして就職。しかし、写真の仕事をしたいという思いは強く、2カ月分の給料を全額使ってカメラを購入。直談判して社内修業し、3年後にファッション誌の専属フォトグラファーに転向した。

(写真上)ガオ・ジーホアさん。一番好きな時間は撮影しているとき。(下)下積み時代に撮りためたセルフポートレート。

だが独立後、継華さんの写真が評価され始め、仕事が軌道に乗った頃に時代の変化が訪れる。急速な紙媒体離れが進んだのだ。上海ではコンビニの雑誌売り場が消滅し、カフェやヘアサロンも雑誌を置かなくなり、仕事は激減してしまった。

それでも2011年、持ち前の行動力で自身のスタジオを設立。ゼロから広告写真の世界に飛び込んだ。

「外資系の雑誌で撮ってきたという自信はありました。でも、独立後は細かい準備を全部自分でこなさなければならず、最初は大変でした」

現在、誰もが知る有名ブランドの広告やタレントの宣材写真などを手がける彼女は、上海を代表する女性写真家の1人。しかし当の本人は、「写真家はサービス業」だと気さくに笑う。

お気に入りのブレスレットをつけると、仕事のテンションが上がる。

「自分をアーティストだとはあまり思ったことがありません。私の仕事はクライアントの要望に細かく応えながら期待を超える写真を提供すること。打ち合わせもとことんやって、アフターサービスまで誰も間に介さずに私一人で担当しています。それが徐々に信頼につながったのかも。口コミでの仕事も増えました」

撮影は夜中まで続く日も多いが、家事や子育ては夫がすべて引き受けてくれている。女性が強い上海ならではの一般的な夫婦の構図だ。食事の準備も、子どもの学校行事や保護者会の参加も夫の役目。公務員をしながら家事をこなす夫に感謝しているが、最近反省することもあった。

「この前、息子に『ママの料理、食べたことないんだけど』と言われてしまって。ちょっとショックを受けて万能調理家電を買いました(笑)。今、説明書を見ながら勉強中です」

▼1日のスケジュール
6:00 起床。野菜まんなどで朝食。
10:30 地下鉄でスタジオへ向かう。
11:00 仕事開始。
13:00 アプリでのデリバリーで昼食。
14:00 仕事。スタジオ撮影、ロケ撮影、打ち合わせなど。
19:00 帰宅。夫が作った料理で家族で夕食。お酒は飲まない。
21:00 家族だんらん。子どもの宿題を見る。日によっては夜中まで撮影が入ることもある。
24:00 就寝。
▼my favorite
●趣味:仕事
●美容と健康:黒クコ茶、チベット紅花茶を飲む
ガオ・ジーホア(高 継華)
写真家・フォトスタジオ経営
1975年、上海市生まれ。復旦大学を卒業後、小学館上海支社勤務。ファッション誌の専属フォトグラファーを経て、2011年に個人のフォトスタジオ「STUDIO9」を立ち上げる。

撮影=長舟真人