企業を見極める2つのチェックポイント

では、次に情普通の知人やエージェントに企業の何について教えてもらうべきかをお示します。優良な企業を見極める上でチェックしておきたいポイントは主に2つです。

1.働く人とカルチャー
2.企業の将来性とマーケット情勢
1.働く人とカルチャー

35歳以上なら自分が会社を引っ張っていく、会社をもっとよくするくらいの志で転職に望んでほしいところ。「企業経営なんて自分に関係のない話」と考えず、どんな経営メンバーが何を考え、どんなふうに企業を発展させていくつもりなのかを把握しておくべきです。特にベンチャーやスタートアップ企業は良くも悪くも経営メンバーのカラーが出やすいので、経営メンバーの人物像や経歴、志向について理解しておくと、その企業の雰囲気もつかみやすいと思います。

知人やエージェントから「こんな人が多い」などの情報をもらったり、採用ページなどから言語化された企業の風土やカルチャーを知ったりすることはできますが、それが本当に自分にフィットするかどうかは、面接を通じて見極める以外にすべはありません。面接では必要以上に自分を良く見せたくなってしまうと思いますが、あくまでも「こちらも企業を選ぶんだ」という冷静な気持ちを忘れずに。面接時の面接官の人との会話や雰囲気だけでなく、面接設定時のやりとりなどからも、しっかりとした誠意のある企業かどうかがわかると思います。

ベンチャー企業の将来性を見抜く着眼点

2.企業の将来性とマーケット情勢

企業の将来性については、アメリカの事例を基に判断すると良いでしょう。スタートアップはアメリカが進んでいるので、アメリカで成功しているビジネスモデルなら日本でも発展していくと思って大丈夫。ソフトバンクの孫正義さんが唱えた「タイムマシン経営」とはまさにこのことで、アメリカで起きたことはしばらくすると日本でもブームが起きるので、アメリカで成功した技術やビジネスモデルを即座に日本に取り入れている企業も多いのです。現在、中国も目覚ましい進歩を遂げており、今後は中国をお手本にしたビジネスも増えてくると思います。逆にどんなに目新しくても、あまりにも斬新すぎるビジネスはリスクが大きく、うまく行かないと考えたほうがいいでしょう。

さらには、競合他社が弱いマーケットが狙い目です。弱いということはつまり、そのマーケットにはビジネスパーソンとして優秀な人がいなくて、市場全体に伸び代があるということです。面接を受けに行った企業の人たちのレベルが低いと感じても、その企業が儲かっている場合はチャンスです。自分が入社することでさらに良くすることができれば、業績はグングン伸びることでしょう。そうなれば、ポジションや年収はおのずと上がっていきます。

企業情報をリサーチする上では投資的感覚も役に立ちますが、転職と投資は実は似て非なるもの。転職には目先のPLではなく、長期的な視点で将来性を見いだす考え方「ファイナンス思考」が必要になると思っています。詳しくは朝倉祐介さんの『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』(ダイヤモンド社)に書かれていますが、今は形もなく見えてもいないものから、将来どれくらいの価値が生まれるかを考えられることがキーポイントで、大きなビジネスに関われるかどうかは、その点にかかっているのです。

高野 秀敏(たかの・ひでとし)
新卒でインテリジェンスへ入社。その後、2005年にキープレイヤーズを設立し、人材エージェントとして30社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内、シリコンバレー、バングラデシュで実行。3000名以上の経営者の相談と、1万名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。マネージャーとして、キャリアコンサルタントチームを運営・教育。人事部採用担当として、数百人の学生、社会人と面談。学校や学生団体での講演回数100回以上。

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