人生を大きく左右する転職。だからこそ、見極めが非常に重要になります。後悔のない転職をするには、企業のどんな部分をチェックしておくべきでしょうか。ベンチャーやスタートアップ企業の採用支援を中心に活躍するキープレイヤーズ代表の高野秀敏さんは、「優良な企業を見極めるポイントは2つある」と言います――。
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企業情報を入手する3つの方法

今はインターネットを通じてあらゆる情報が簡単に手に入るので、ある程度名前の知られた企業であれば大体のことは自分でリサーチできるはずです。とはいえ、創業から間もないベンチャーなどの場合は情報が限られているので、なかなか判断がしにくいのではないでしょうか。そこで今回は、ベンチャーやスタートアップ企業の中から優良な企業を見極める方法についてお話ししたいと思います。

まず、企業情報を自分だけの力でつかむというのは、無理だと思ったほうがいいでしょう。上場企業なら『四季報』などで業績を調べることはできますが、『四季報』に載っている情報がすべてではない。そもそも未上場企業の情報は『四季報』などに掲載されていないケースがほとんどで、決算公告を怠っている企業も多いため、実情を知ることは難しいはずです。不確定な情報探しに労力を費やすのは、はっきり言って時間の無駄。だからこそ私は、企業情報収集は詳しい人に任せるのが一番だと思っています。その方法は主に3つ。1つ目は情報通の知人と親しくしておくこと。2つ目は転職クチコミサイトを利用すること。そして、3つ目はわれわれのような転職エージェントのプロを頼ることです。

親しいエージェントを1、2人持とう!

やたらと顔が広く、あらゆる情報に長けた知人が、あなたにも1人くらいはいませんか? この手のタイプの人間は、周囲に有益な情報を与えることに喜びを感じる人が多いので、素直に頼ってみれば何かしらのヒントや情報をもたらしてくれると思います。とはいえ、与えてもらってばかりはダメ。世の中ギブ・アンド・テークが基本ですから、何かしてもらったらお返しをする必要があります。あなたも相手のメリットになる情報などを返さなくてはなりません。そうでないと、旬な情報をもらうことはできないでしょう。

転職相談をしていると、クチコミサイトのことがよく話題に上がります。実際に働いている人の生の声は、やはり気になる人が多いようです。いくつか転職のクチコミサイトがありますが、おすすめなのは5月23日にVorkersからサービス名が変更になったOpenWork(オープンワーク)です。

OpenWorkは社員もしくは元社員から収集したクチコミを公開するサービス。各企業が待遇面の満足度、社員の士気、風通しの良さ、社員の相互尊重、20代の成長環境、人材の長期育成、法令順守意識、人事評価の適正感の8つの項目で評価され、約260万件ほどのクチコミが閲覧可能です。企業関係者から寄せられた、これだけの数の生の情報がまとまって読めるのですから、貴重な情報源になるのではないかと思います。

35歳以上で転職を考えるのであれば、親しいエージェントの1人や2人は作っておくべきです。「今すぐに転職するつもりはないけれど、いい情報があったらその都度、教えてください」と言えるような関係性をエージェントと築いておけば、彼らの方から定期的に連絡をくれるはずです。また、こちらが求めればエージェントはプロの目線で厳しく判断した情報を教えてくれるでしょうから、転職について気軽に相談のできるエージェントを見つけておくと良いと思います。

企業を見極める2つのチェックポイント

では、次に情普通の知人やエージェントに企業の何について教えてもらうべきかをお示します。優良な企業を見極める上でチェックしておきたいポイントは主に2つです。

1.働く人とカルチャー
2.企業の将来性とマーケット情勢
1.働く人とカルチャー

35歳以上なら自分が会社を引っ張っていく、会社をもっとよくするくらいの志で転職に望んでほしいところ。「企業経営なんて自分に関係のない話」と考えず、どんな経営メンバーが何を考え、どんなふうに企業を発展させていくつもりなのかを把握しておくべきです。特にベンチャーやスタートアップ企業は良くも悪くも経営メンバーのカラーが出やすいので、経営メンバーの人物像や経歴、志向について理解しておくと、その企業の雰囲気もつかみやすいと思います。

知人やエージェントから「こんな人が多い」などの情報をもらったり、採用ページなどから言語化された企業の風土やカルチャーを知ったりすることはできますが、それが本当に自分にフィットするかどうかは、面接を通じて見極める以外にすべはありません。面接では必要以上に自分を良く見せたくなってしまうと思いますが、あくまでも「こちらも企業を選ぶんだ」という冷静な気持ちを忘れずに。面接時の面接官の人との会話や雰囲気だけでなく、面接設定時のやりとりなどからも、しっかりとした誠意のある企業かどうかがわかると思います。

ベンチャー企業の将来性を見抜く着眼点

2.企業の将来性とマーケット情勢

企業の将来性については、アメリカの事例を基に判断すると良いでしょう。スタートアップはアメリカが進んでいるので、アメリカで成功しているビジネスモデルなら日本でも発展していくと思って大丈夫。ソフトバンクの孫正義さんが唱えた「タイムマシン経営」とはまさにこのことで、アメリカで起きたことはしばらくすると日本でもブームが起きるので、アメリカで成功した技術やビジネスモデルを即座に日本に取り入れている企業も多いのです。現在、中国も目覚ましい進歩を遂げており、今後は中国をお手本にしたビジネスも増えてくると思います。逆にどんなに目新しくても、あまりにも斬新すぎるビジネスはリスクが大きく、うまく行かないと考えたほうがいいでしょう。

さらには、競合他社が弱いマーケットが狙い目です。弱いということはつまり、そのマーケットにはビジネスパーソンとして優秀な人がいなくて、市場全体に伸び代があるということです。面接を受けに行った企業の人たちのレベルが低いと感じても、その企業が儲かっている場合はチャンスです。自分が入社することでさらに良くすることができれば、業績はグングン伸びることでしょう。そうなれば、ポジションや年収はおのずと上がっていきます。

企業情報をリサーチする上では投資的感覚も役に立ちますが、転職と投資は実は似て非なるもの。転職には目先のPLではなく、長期的な視点で将来性を見いだす考え方「ファイナンス思考」が必要になると思っています。詳しくは朝倉祐介さんの『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』(ダイヤモンド社)に書かれていますが、今は形もなく見えてもいないものから、将来どれくらいの価値が生まれるかを考えられることがキーポイントで、大きなビジネスに関われるかどうかは、その点にかかっているのです。

高野 秀敏(たかの・ひでとし)
新卒でインテリジェンスへ入社。その後、2005年にキープレイヤーズを設立し、人材エージェントとして30社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内、シリコンバレー、バングラデシュで実行。3000名以上の経営者の相談と、1万名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。マネージャーとして、キャリアコンサルタントチームを運営・教育。人事部採用担当として、数百人の学生、社会人と面談。学校や学生団体での講演回数100回以上。