マネジメントとは「グレーな世界」を生きる覚悟
暗黙のルールの中で生きていくうえで心得ておきたいことがあります。それは「グレーな世界」に慣れることです。
最近は社内に女性が増えたり、外国人が増えたりと組織の多様化が進んでいて、物事をはっきりさせようという動きはあります。しかしそれは仕事のやり方やルールの話であって、やはり重要な決定には社内政治的な力が働いて、一般の社員から見えない世界があります。会社という組織が人間から成り立っている以上、それは消しようがないのです。
女性に限らず、白黒つけたがる人がいます。しかしポリティカルなことや、組織にとって重要なことの大半はグレーであることが多いものです。白はあり得ませんし、真っ黒ということもありません。
組織の上層部が扱う物事はすべからくグレーです。白や黒と判断が付くものは実務者レベルですでに決裁されているので、上層部が判断する対象にはグレーなものしか残らないのです。
同じ濃度のグレーであっても、それを「黒」と判断するのか、「白」と判断するかは暗黙知の世界です。その場の雰囲気で決まることも多いのです。
マネジメントとは「グレーな世界」を生きる覚悟です。もしあなたが、職場、組織を動かし、何かを成し遂げたいのなら、グレーな世界をホワイトに塗り替えようとするよりは、グレーな世界を生き延びる方法を考えた方がいいのではないか、と思います。
ほとんどの役員会議は企画の潰しあい
よく「あの人の企画は通って、なぜ私の企画は通らないのか」と不満に思うことがあります。そのときに「どうしてですか」と上司に聞いて答えが返ってくるとしたら、その企画はレベルが低いと考えてまず間違いありません。たとえば「企画書としての形式をもっと整えて」という程度で十分というレベルの企画です。
逆に企画としてのレベルは高く、役員会議まで上がっていってダメだった場合は、役員同士の人間関係が大きく影響している可能性が高いと思います。たとえば、こちらの企画に賛成している役員がいたとして、その役員とひどく仲の悪い役員が頑なに反対したといったケースです。まさに「グレー・オブ・グレー」の世界が展開されているのです。
だから大事な企画を提案する場合は、役員の人間関係まで頭に入れる必要があります。絶対通したい企画だけど、役員同士、仲が悪くて役員会議で決裁が降りそうもないと予想されたら、役員の頭越しに直接社長に提案する思い切った手も講じます。それが世の中で言う「賢い」ということでしょう。
実際ほとんどの役員会議は、仲のよいメンバーが集まっているとはお世辞にもいえません。元々、ライバル同士が集まって開く会議です。仲が良いわけがないのです。最後は誰が社長になるかを競っている者同士です。相手の企画に難癖をつけ、自分の企画を通そうとするのは当然です。