日本の社会では、長い間、「年長者ほど能力も見識も高く、したがって地位も報酬もまた高くて当然」という認識が広く社会に共有されてきた。しかし、今の若者は多分、社会の変化についていけないオッサン連中よりも、自分の方がずっと優れていると思わされる場面に何度も何度も遭遇しているはずだ。そして、ぼーっと毎日を過ごしていれば、私たちもまた、そう遠くない将来に、そんな冷たい視線を若者から浴びせられるかもしれないのである。そんな目に遭う前に実践すべき予防策とは?

※本稿は著者・山口周『劣化するオッサン社会の処方箋』(光文社)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/YinYang)

人材のクオリティは、世代交代のたびに三流に近づく

人材の質を一流、二流、三流と分けた場合、もっとも出現率が高いのは三流です。企業を起業し、成長させることは一流の人材にしかできないことですが、組織が成長し、人員が増加すればするほど、採用のエラーや人材の枯渇といった要因から三流の人材が増えることになります。

その上でさらに、二流の人間は一流の人間を見抜けますが、三流の人間は一流の人間を見抜けず、二流の人間は一流にコンプレックスを抱えていてこれを疎んじるため、一度でも二流の人材がトップにつけば、以降、その組織のトップに一流の人材がつくことはなく、人材のクオリティは世代交代のたびに三流の平均値へと収斂していくことになります。

組織の人材クオリティが、世代交代を経るごとにエントロピー増大の影響を受けて三流の平均値に収斂するということは、長く続いている大企業であればあるほど、リーダーシップのクオリティが劣化している確率が高いということです。

2018年6月、1896年の開始以来、ダウ平均株価の構成銘柄であり続けた最後の企業であるGEが、ついにそこから外れ、話題となりました。

ダウ平均株価を構成する30の企業には、その時代のアメリカ経済を代表するような企業が選ばれ、必要に応じて入れ替えられてきましたが、GEを最後に、開始以来選ばれている企業がなくなったのです。現象面だけからいえば、100年以上にわたって「代表的な企業」であり続けることは不可能だということなのでしょう。

このメカニズムにより、なぜ劣化したオッサンが組織の上層部に居座るようになるのかが理解できると思います。