「会社以外で通用するスキル」や「会社の外に開かれたネットワーク」があるか?

では、そのような状態を避けるためにはどうすればよいのか。

キーワードは「モビリティ」です。

どこでも生きられる、誰とでも働けるという自信が、オピニオンとエグジットの活用へとつながり、これが権力を牽制する圧力となります。

モビリティを高めるためには「会社以外で通用するスキル」と「会社の外に開かれたネットワーク」が重要になってきます。

では、どのようにしてこの二つを獲得し、育てることができるか。

カギは「良質な仕事体験」と「社外での活動」ということになるでしょう。

社外でも通用するようなスキルや知識の獲得は、良質な業務体験と良質なコーチングによってなされます。メンバーの立場として、これら二つをコントロールすることはそれほど簡単なことではありませんが、できる限り良質で大変な仕事を、なるべく優秀で見識のある上司とやる、というのが基本的な戦略になります。

その上で、自分の仕事体験が、難易度とスキルの釣り合ったものになっているかどうかのチェックを定期的に行いましょう。

「異業種交流会」を除いた、意味ある社外活動を

人の能力は、タスクの難易度とスキルが適度に釣り合った「フロー」に入ったときにはじめて開発されます。

しかし、日本では、多くの人がタスクの難易度も低く、スキルのレベルも低い「無気力」のゾーンで仕事をしている。長いこと「無気力」の領域で仕事をしていれば、スキルも開発されず、そもそもチャレンジができないような状態に追い込まれることになるので注意が必要です。

また、会社の外に開かれたネットワークを構築するには、「社外での活動量」を増やすしかありません。

よく、社外での人脈を増やすことを目的にして、異業種交流会などに出席している人がいますが、個人的にはあまり効果がないのではないか、と思っています。なぜなら、仕事の契機につながるような意味のある人脈は、単にパーティで名刺交換した程度のつながりでは作り出せないからです。

その人の信用というのは、ストレスのかかる状況下で、どのような判断や言動を取るかを観察しなければ、生まれません。そのような状況下でも、人として「真・善・美」にのっとった判断や行動ができる人だ、ということがわかれば、その人の信用の貯金口座には新たな振り込みがされることになります。そして、この「ストレスのかかった状態」というのは、やはり仕事を通じてしか得られません。

これが、筆者が異業種交流会などの効果に懐疑的な理由です。

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