男性の育休「義務化」を目指す議員連盟が発足し、話題を集めている。なぜ今、男性育休の義務化が必要なのか。少子化ジャーナリストの白河桃子さんは「男性が働き方を変え、早く家に帰るだけでは足りない。男性がもっと家庭に参画するには、さらなる『後押し』が必要で、その鍵が男性育休の義務化にある」と指摘する――。

令和は男性の家庭活躍の時代

5月23日自民党本部で行われた男性の育休「義務化」を目指す議員連盟発起人会に民間オブザーバーとして参加した。驚いたのは、会場に入る廊下からマスコミのカメラが周り、発起人代表の松野博一議員、和田義明議員、森まさこ議員、松川るい議員らの挨拶には、各社のテレビカメラが勢揃いという注目度だ。「男性育休義務化」というテーマにこれだけマスコミが集まる時代になったのだ。またこの日は議員20名ほどが参加したが、若手の男性議員の割合が圧倒的に多いことも特徴的だ。全部で40名ほどが議連メンバーだが、大臣経験者が11名というパワフルな議連である。

5月23日に行われた男性の育休「義務化」を目指す議員連盟発起人会の様子。

松野博一元文部科学大臣は「義務化というのはショッキングな言葉だが、男性が育児に参加するという意識改革を、男性・企業・社会として進めること(を意味する)」と発言。松野議員自身、「幸か不幸か、落選期間中に子育てにしっかり関わった」経験があり、「人生の中で一番思い出深い時期」と語っていた。

民間オブザーバーとしてワーク・ライフバランス社の小室淑恵さんが「平成は女性活躍、令和は男性の家庭活躍の時代」として「140社の企業トップが集うイベントで『男性育休100%宣言企業』を募ったところ、60社が確約してくれた」と最近の企業の動きを紹介。また産婦人科医の宋美玄さんは、女性の産後うつの対策としてもパートナーである父親が寄り添うことの重要性を語った。

「女性ホルモンは妊娠期は200倍に上がる。しかし出産後に急激に下がりメンタル不調もでる。そのフィジカル、メンタル共に辛い時期に授乳しなければいけない女性の負担は大きい」

議連としては「企業に(社員からの申請がなくても育休を与える)“プッシュ型”の育休取得」の方向性を議論するということだ。

「企業に義務を課すのは、特に中小企業には負担が大きいのでは?」「男性が家にいてゴロゴロしていても役に立たない」など、男性育休「義務化」というワードには反発も大きいが、「男子学生の8割が将来育休を取りたいと回答し、女子学生の9割が将来のパートナーには育休を取ってほしい」(小室さん)という時代の流れは無視できないだろう。

長時間労働の「パパはゾンビ問題」

私は政府の少子化や働き方の会議に有識者議員として関わり、「男性育休の重要性」と「パパはゾンビ問題」について発言してきた。「パパはゾンビ問題」は、あるワーキングマザーの「パパは死んだものだと思っている」という発言から生まれた言葉だ。「父親がいると思うと、一緒に子育てをしてくれるものだとつい期待してしまう。しかし実際には平日は夜遅く帰宅するのでほとんど役に立たない。いっそ「死んだもの」と思わないと自分が辛くて仕方がない」というのだ。会場にいた他のママからも「私も私も」という声が上がった。

妻が働く、働かないに関わらず、7割の男性が家事育児をほとんどしていない。パパは家族のために一生懸命仕事をしているのに「ゾンビ化」する悲しい現実がある。しかしこれは「働き方」の問題でもあり、パパが育児に関わりたいと思っても、会社がそれを許さなかったという背景がある。