「3分の1に入らない」と信じる若者たち

そして、結婚しようと思っている若者のほとんどは、結婚は一生続くものだと考えています。現実には「3分の1の確率で離婚する」ということがわかっていても、しょせん3分の1なのです。

逆だったら話は別でしょう。3分の2が離婚するというのであれば、もう結婚に頼れない、経済的に相手に頼れないと考えるでしょうが、3分の1だと、自分がその3分の1に入るとは、なかなか想定できない。というよりも想定したくない。だから、自分は真面目で誠実な離婚しない人と結婚できると自然に考えるわけです。

アメリカは日本以上、2分の1の確率で離婚する社会ですが、そのアメリカでも、結婚するときには一生続くと思って結婚します。ただアメリカでは、最初から長続きはしないなと思えば結婚しない同棲という選択がある。つまりこれが、結婚する必要のない結婚不要社会というものなのです。

その意味でも、いまだ日本は従来型の近代的結婚に固執しているし、3組に1組が離婚する時代になっても、その近代的結婚というものが永遠に続くと思っているからこそ、「結婚しよう」とほとんどの人たちが考えるのです。

女性が近年ますます重視しているのは「経済力」

山田昌弘『結婚不要社会』(朝日新書)

そんな今日の日本で、いったいどういう人が結婚しているのでしょうか。

結婚できる男性│女性が結婚相手に選ぶ男性│は「経済データが重要である」と言えます。つまり、職業が安定していて収入が高い人であればあるほど結婚しやすく、職業が不安定で収入が低い人であればあるほど結婚しにくい。これはいくつかの統計分析が示していますし、若者が結婚相手に求める条件といったアンケート調査の回答でも、女性は、近年ますます経済的な安定というものを重視しています。

たとえば、朝日新聞が2018年12月に行ったネット調査「未婚の若者の結婚観」(25~34歳の男女、約1000人)では、「結婚相手に譲れぬ条件」として、72%の女性が「収入」を挙げています。これに対して「収入」を条件に挙げる男性は29%でした。

年収を気にしない女性は全体の19%

「相手に求める年収」という質問には、女性の63%が「400万円以上」と答えています。そして「関係ない」と答えた女性は19%、男性は64%です。

こうした男女の意識の差│女性は6~7割の人が収入重視、男性は2割くらいの人が収入重視│は、じつは十数年前から変わっていません。

(中略)もちろん、いままで女性が男性の経済データを重視しなかったわけではありません。そうではなくて、経済データを重視せざるを得ない状況ができてしまったということです。

30年前の被雇用者は、経済的に安定していました。ところがいまは、経済的に不安定な若い男性が増えているので、経済データを結婚相手の条件に挙げる女性が増えてきたわけです。