「愛があっても貧乏では困る」本音社会に変化

(中略)いまは若い男性の経済格差が広がってしまったので、女性はその収入をより強く気にせざるを得なくなっています。アンケートの回答にしろ婚活ブームにしろ、それが社会に表面化しているというのが現状です。

それにしても『結婚の社会学』を書いてから約20年の間に、こうした「本音」をオープンにしていいか・悪いかという判断基準が大きく変わったと思います。20年前は、自治体の報告書や新聞に本音を書こうとすると「待った」がかかりました。「お金なんて関係ない、結婚は愛ですべきだ」というようなイデオロギーが残っていたのです。

いいか悪いかはともかくとして、いまはそうしたイデオロギーに反する現実でも発表できるようになりました。社会的にも語られるようになったし、政府の機関もそれを表明しています。逆に言えば、結婚に関する本音がオープンに語られるようになったということは、「愛があれば貧乏でもかまわない」という恋愛至上主義が事実上なくなってしまったといえるのかもしれません。二十数年こういう調査を続けていると、社会の反応が如実に変わってきたのを痛感せざるを得ません。

結婚は必要ないが、自分は結婚したい日本人

(中略)ちなみに、2018年のNHKの「日本人の意識」調査では、結婚することについて「必ずしも必要はない」と答えた人の割合が68%でした。この調査は1973年から5年ごとに行われているものですが、過去25年間で最も高い数値だそうです。

結婚が必要ないという答えは、もちろん、自分が結婚しなくてもいいという考えを示すものではありません。単に「結婚しない人がいてもいい」というだけで、逆に言えば、「結婚するんだったら、ちゃんとした結婚をしたほうがいい」と考えている人が多数派であることが推測できるわけです。

つまり、さまざまな調査が示しているのは「自分は結婚したいけれども、他人はどうなろうとかまわない」と考える若い人が増えているということなのです。

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