30年前にやるべきことを、今やっている

日本社会の変化が遅い理由に、政治の問題もあります。

例えば2019年に入り、欧州連合(EU)の欧州議会が、男性が育休を最低10日間取得するという新ルールに暫定合意した、という報道がありました。日本でもそういった施策はありだと思いますが、余裕のある大企業はともかく、利益率の低い中小企業は現場が回らなくなりますから、難しいでしょう。

一方で、政府が少子化対策のためにそれでもやるという決断をすべきとも言えます。そもそも政治家とはそういった影響も覚悟して決断すべきで、新しい制度によって副作用が出たときにちゃんとケアするのが政治というものなのです。ところが、今の政治家は「軋轢(あつれき)やひずみが出そうだからやめておこう」と対策を先送りにしがち。本当の政治家がいないのです。

各省庁で働く人たちは対策を考え提案しているのですが、政治家が責任を負って実行しない。例えば、所得税の配偶者控除をなくすという案が一時期検討されましたが、結局廃止には至りませんでした。それも与党が選挙のことを考えて、それも与党が選挙のことを考えて配偶者控除を受けている層の反発を避けたからではないでしょうか。配偶者控除は、主な稼ぎ手(たいていは男性)の所得が高いほど有利なもので、さらに夫の所得があまり高くないので女性も共働きである程度稼いでいるような家庭には適用されません。そういう意味で、逆進的な税制だと言えます。

日本の少子化に関する政策はすべて手遅れになってから実行されていて、本来は30年前にやるべきことを今やっているという印象です。これでは当然、出生率は上がっていきません。

男女平等は実現できるか

149カ国中110位というジェンダーギャップ指数(図表2)を見れば分かるように、日本は男女平等への動きがかなり遅れています。ただ世界各国を見ても本当に平等になっている社会は存在しないので、男女が平等な社会というのは、残念ながら近い将来にはやってこないと思います。

ジェンダーギャップ指数(2018)

もちろん平等に近づいているか遠ざかっているかと言えば、近づいてはいるわけですが、日本ではそのスピードがゆっくりすぎる。もちろん、政治も変わらないといけないし、よりよい社会を実現するためには身近にいる人々の意識を変えなければいけない。その意識を持って、一人ひとりがやれることを少しずつやれるようになればいいと思います。

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