“男の甲斐性”の定義をアップデートせよ

ここで冒頭の問いに戻るのだ。「夫の収入が多ければ妻は働く必要がない」だろうか? そういった「常識」はとうに過去のものとなったいま、そう口にする男性は、わざわざ健気にも、日々の糧を得る責任をその一身に背負い込んでしまっているのではなかろうか。収入がそこそこの、突き抜けられない男たちほど、共働きが当たり前の社会になってもなお、心のどこかに稼ぐのは男の役割という古い価値観を持ち続けてしまう。だからこそ、年収2400万円の男や有能な奥さんに引き、気後れやひがみを表出させる。妙な年収プライドが邪魔をして「有能な奥さんを見つけて共に働き続けていこう」という発想にはならないのだ。

各種メディアで多くの連載を抱える、人気フィナンシャルプランナーの山崎俊輔氏は、著書『共働き夫婦 お金の教科書』(プレジデント社)で「現代は夫婦3組のうち2組が共働きという時代。結婚退職をする人の割合は1980年代後半では37%だったが、2010年代前半には17%弱まで下がり、もはや少数派になっている」と指摘する。

さらに現代の事情に精通したフィナンシャルプランナーとして、「共働夫婦は二人合わせて5億円ほどの生涯賃金を見込め、さらに退職金や年金で1億円以上が上積みされる可能性も。結婚退職しないこと(させないこと)は夫婦が幸せになるカギ」とし、「共働きカップルの結婚(では)、寿退社を許さないのが今の時代の『男の甲斐性』」とまで明言している。

もういい加減、稼ぐことが男の甲斐性という呪縛から、男たちも解放されるべきときがきているのではないだろうか。

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