管理職の妻をもつ夫は幸せなのか
日本では管理職として働く女性の割合が徐々に増加しています。具体的な数値を見ると、民間企業の課長級の役職者における女性割合は1990年では約2%でしたが、2019年には約11%にまで上昇しています(※1)。
このような女性管理職の増加は、社会の大きな流れとして今後も続くと予想されますが、管理職となることが女性またはその家族にどのような影響を及ぼすのかという点は、あまり検証されていません。
特に妻が管理職として働く場合、その配偶者である夫に及ぼす影響については、あまり語られてこなかったのではないでしょうか。
日本の場合、性別役割分業意識が強く、「男性=仕事、女性=家事・育児」という価値観が色濃く残っています。妻の管理職での就業は、この価値観から外れてしまうため、家庭内に不和をもたらす可能性もあり、その実態が気になるところです。
そこで、今回は妻の管理職での就業が夫の幸福度に及ぼす影響について検証した研究を紹介していきたいと思います。
(※1)https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-11.html
妻が管理職として働くポジティブな影響
実際の検証結果に移る前に、妻の管理職での就業がもたらす影響について整理しておきましょう。
妻の管理職での就業には、ポジティブな影響とネガティブな影響が存在します。
まずポジティブな影響として挙げられるのは、世帯年収の増加です。夫だけでなく妻も働き、かつ妻が管理職につくことは世帯年収を底上げします。
このような世帯年収の増加は、生活に潤いをもたらすでしょう。もちろんその恩恵は夫にも行きわたり、住宅の購入や子どもの教育費用を支払ううえで重要な支えとなります。
また、もう一つのポジティブな影響として考えられるのが夫の所得低下や失業に対する保険です。
長期的な低経済成長に直面してきた日本では、予期せぬ形でボーナスが削減されて夫の所得が低下したり、失業する可能性があります。これらによる世帯所得の低下を補填する保険として、管理職で働く妻の稼ぎが機能すると考えられます。