「つまらないおばあちゃん」にならないために

先日夫に「仕事をリタイアしたらどうしたい? 夢は?」と聞かれたのですが、答えられなくて愕然としました。まったく考えたことがなかったのです。今の私は仕事と子育てしかしていません。子どもはやがて巣立ちます。そのあと自分はどうしたいのだろうと少し焦りました。

そういえばインタビューなどで、「趣味は?」と聞かれても、答えられませんでした。「ビジネス以外の楽しみや、やりたいことは何だろう?」「『キャリア』だけでなく『ライフ(人生)』を考えなくては」と思いました。

たとえ仕事をリタイアしても、好奇心を持ち続け、常に新しいことを学んだり、いろんなことに挑戦していきたいのです。「つまらないおばあちゃん」にはなりたくありません。

例えば、ボランティアを考えています。これまでも時々、教会の活動で、ホームレスにおにぎりを配る活動などはしてきましたが、ほかにも、子どもが好きなので子どものために何かできないか、高齢者のためにできることはないか、などと考えています。

仕事も家事も、普段はつい、限られた時間にいっぱい詰め込もうとしてしまいます。日本の女性はとくに、自分のキャパの300%くらい働いているのではないでしょうか。でも、そうして「やること」に追われていると、「考えること」ができません。考える時間をつくるために、ヘルパーさんやシッターさんをお願いすることをギルティーに感じる必要はないと思います。夕飯もたまにはピザでいいんですよ。

私もこれからの休暇は、将来つまらないおばあちゃんにならないために、何をやりたいか考えたり、思いついたことを試したりする時間にすることを、意識しようと思っています。

クリスティン・エドマン
ジバンシィ・ジャパン プレジデント&CEO
1975年、日本人とアメリカ人のハーフとして生まれ、東京で育つ。97年、マテル・インターナショナルに入社、2000年に株式会社アントステラへ転職。結婚を機にスウェーデンに移住し、05年にストックホルムでMBAを取得。H&M本社に入社。2007年からのアジア進出に伴い、香港でエリア・マネージャーを経験した後、H&Mジャパンの立ち上げから2016年まで代表取締役を務めた。2017年、LVMHファッション・グループ・ジャパンの「ジバンシィジャパン」プレジデント&CEOに就任。二児の母としてもワークライフバランス、フラットな組織や人材育成にも力を入れ、日本女性の社会進出を支援する活動に積極的に取り組んでいる。著書に『Up to you「よくばりに生きる」ためのキャリア戦略』(日本経済新聞出版社)がある。

構成=大井明子 スタイリング=丹きぬ子 ヘアメイク=成田幸代