社会に根づく性別役割分担

「男女共同参画が謳われて20年近く経った今も、『男は仕事、女は家事・育児』といった性別役割分担の意識が社会に根強く残っています。まず、その意識を取り除いていくことが大切。そのためには世の中の仕組みを変えることから始めるべきです。以前、JUKI社内で育休制度を取り入れると、私たちも意外だったのですが、育休の利用に男性が手を挙げましたからね」(芳野さん)

平成初期~中期、キャリアを継続するには結婚・出産を諦めるか、スーパーウーマンになるかしかなかった。しかし、平成後期になると法整備はもちろん、人々の意識も徐々に男女協働へと変わり始めた。

「バブル崩壊後の10年間は“失われた10年”と呼ばれますが、女性にとっては追い風が吹いた10年なんです。その後の10年間はセクハラやパワハラなどの禁止項目が増え、女性の地位が向上した時代。でも、最近の10年間では、女性の問題が見えにくくなってきています。以前は、働く機会の平等を求めていましたが、今は結果の平等を求めなければ真の男女平等社会にはならないと思うのです。男女平等に成長の機会が与えられているか、コース別管理を隠れみのに女性をふるい落としていないかなど、数値化できない問題の洗い出しが今後の課題です」(芳野さん)

問題はまだあるが、働く女性を取り巻く環境は大きく前進した。18年には男女候補者均等法が成立。政治への女性参加が増えれば、女性の働き方や労働環境はもっと変わるだろう。しかし、平成の30年が経ってもまだ、管理職になりたい女性は5割前後と、男性の9割に比べると低いのが現実だ。会社側はもちろん、働く女性自身の中に残るアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)=性別役割分担意識をなくすことが、新たな時代をつくる一歩となる。

梅田 恵(うめだ・めぐみ)
日本アイ・ビー・エム 人事・ダイバーシティ企画部長
1987年入社。広報担当課長、人事広報担当部長を経て、2008年から現職。企業内保育園設立プロジェクトを立ち上げるなど、ダイバーシティ活動多数。
 

西山和枝(にしやま・かずえ)
大塚製薬 ニュートラシューティカルズ事業部・女性の健康推進プロジェクトリーダー
女性の健康とWLB推進員。1990年医薬品事業部にMRとして入社。2003年同部課長に昇格。15年から現職。
 

芳野友子(よしの・ともこ)
日本労働組合総連合会 副会長
1984年JUKI入社。88年JUKI内労働組合中央執行委員に。ゼンキン連合(現JAM)などを経て2015年から現職。男女雇用機会均等法制定や育児休業法制定運動に参加。