もし、財前部長が転職したら……

これはドラマの話ですが、「下町ロケット」に登場する帝国重工という会社は日本を代表する巨大企業として描かれています。その帝国重工に勤める財前部長はドラマにおける典型的なヒーロー像で、様々な苦難や会社の中での陰湿な妨害を受けながらも目的に向かって邁進する姿は誰もが共感を覚え、憧れます。でも一方では、あれだけ社内の派閥抗争で嫌な思いをするのなら辞めて独立してもいいでしょうし、ライバル会社に移っても大活躍するはずです。恐らく彼の部下も多くが付いてくることでしょう。もちろんドラマですから、それをしないで社内に残って戦うから面白いのだとも言えますが、ライバル会社に移ったら移ったで、それはそれなりの面白いストーリーになるような気がします。

知る人ぞ知る、お得な制度

突然、どうしてこんな話をするかということですが、これはフリンジ・ベネフィットを考えた場合、大企業においてはおおいにあり得ることだからです。現実に大企業にいる人達は多かれ少なかれ財前部長のような厳しい状況で仕事せざるを得ない人はかなり多いだろうと思います。しかしながら、あまりにも福利厚生が充実しているためになかなかそこを離れることができないという人は実際にたくさんいます。私が今まで取材した人の中にも、本当は会社を辞めたいけど「とにかく企業年金を受け取れる資格のくる年齢までは我慢して会社に残る」とか「健康保険のことがあるので、辞めたくない」という人は意外と多いのです。

ことほど左様に会社の福利厚生制度というのは知る人ぞ知るお得な制度で、これを知っておくことで随分無駄なお金を使わなくて済みます。そもそも、「会社の制度」は収益を挙げることを目的としたものではありませんので、民間のさまざまな金融サービスに比べてかなりメリットは大きいからです。

日本の企業において、こうした福利厚生は昔に比べて小さくなったとは言うものの、やはりまだまだ有利な制度は残っています。たかが会社の制度と思わずに、具体的にどんなサービスが受けられるのかを知った方が良いと思います。“社員だからこそ受けられる経済的利益”をうまく活用することは、サラリーマンの特権です。福利厚生ガイドを「契約保養所」の欄しか見ていないとすれば、それは大損ですよ。

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