職場と家庭の逆転現象には要注意

妻のこだわりが少ない家事を任せていくこともポイントです。例えば洗濯ものを干すとき、妻なりの決まった干し方があって、1ミリのズレも許せないなど、妻がこだわってやっているタスクは、分担しにくいものです。

できれば、実際に夫にやらせてみて、その成果が自分の望んでいるレベルまで達していなくても、多少我慢したほうがいい。そうしないと、いつも夫を「解雇」して終わり、ということになりかねません。ただ、仕事と同じで、ある程度の品質管理はしなければなりません。あまりにも家事のクオリティが低かったら注意していいと思います。

気をつけておきたいのは、職場と家庭の「逆転現象」です。家事には仕事と同じく習熟や工夫が必要なのですが、あまり「家事の仕事化」を突き詰めると、「外でも仕事、家でも仕事」になってしまいます。家では家事や育児をやらされて疲れてしまい、会社のほうがほっとひと息つけるという心理状態になることを「逆転現象」といいます。特に今は、会社に居心地の良いカフェがあったり、お昼寝スペースがあるなど、「職場の家庭化」のような動きが進んでいますから、夫をあまり追い詰めすぎると、職場の居心地のほうが良くなり、家になかなか帰ってこないという状態になりかねません。

夫が料理をしても妻の負担が減らない現実

家事のOJTをするうえで目標にしてほしいのは、夫の家事の回数や時間を増やすことではありません。目標はあくまで、「妻の負担を減らすこと」です。家事頻度の研究によると、夫が食事の準備を1回増やしても、実際にはそれによって妻の負担が1回分減っていません。夫の家事1回が妻の1回に該当せず、夫が7回増やしても妻が1回分も減っていない、というデータもあります。

共働き家庭では時間がないので、夫がやった家事の質が悪いと妻が「もう、自分でやる」ということになってしまいがちですが、妻がどうやって家事をしているのか、そのどこを分担すれば妻の負担を減らせるのか、夫側に考えてもらう必要があります。