今も“仕事は先着順”を実践中

その日の研修を終えてお風呂に入ると、その講師がいました。僕はそこでも彼を捕まえて、口論したのです。

出口治明『知的生産術』(日本実業出版社)

「全部の書類に目を通してから優先順位の高いものからやっていくなんて、プロ根性が足りない。そんなことは小学校レベルの話です。1時間でこの書類を全部処理するにはどうしたらいいかを考え、集中して取り組めば、優先順位などつけなくても、すべて処理できるはずです。

だとすれば、上から順番に処理するのが一番早いはず! 畳の上の水練のような研修は時間の無駄です!」

これも一種の「若気の至り」でしょうか。

研修の講評には、「出口君は非常に独創的な考えを持ち、周到で、処理能力も高いが、頑固で融通が利かない」と書かれていましたが(笑)、今でも僕は、「時間内にすべての仕事を終わらせるのが大前提であり、だとすれば、上から順番に、先着順で処理するのが一番早い」と考えています。

メールも来た順に対応

一般社会でいえば、かぎりある時間の中でいくつもの仕事を抱えているわけですから、先着順ほど合理的でわかりやすい方法はありません。

僕は、メールは原則として来た順に対応し、未決の書類は古い案件から処理していきます。面会の約束は先着順に応じます。

出版社から本の依頼が来れば順次受けますし、講演会も先着順で引き受けます。

どの仕事も、等しく大切です。

だとすれば、もちろん例外はあるでしょうが、先着順という発想を守って「先に来たものから順番に進行する」ほうが、仕事の生産性は上がると思うのです。

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