▼歯科治療のウソ? ホント?
よくいわれる治療の常識も、実は常識ではないかも……。素朴な疑問をぶつけてみました。
QUESTION(1)治療が早く安く終わる歯科医は良心的で信頼できる
→ウソ×

治療期間と費用は治療プランによって異なります。最良のプランは時間も費用もかかるけれど、質が高く長持ちするものです。保険の範囲内で済ませる治療は、早くて安いかわりに、見た目も強度もそれなりになります。質を重視する患者さんは、一番安価なプランは選びませんね。3~4ある選択肢の利点・欠点を、できるだけ客観的に説明してくれる歯科を選ぶのも大事です。
QUESTION(2)歯は絶対に抜かないほうがいい
→ウソ×

もちろん歯を残す努力は重要ですが、治療できる限界を超えてしまった歯は抜いて、ブリッジやインプラントでちゃんとかめるようにして、口腔内の健康を取り戻すための治療をするべきです。無理に残せば、顎の骨がなくなって入れ歯も安定しなくなり、インプラントだってできなくなるでしょう。1本の歯だけでなく、口の中全体の健康を守る視点を持ちたいものです。
QUESTION(3)ブリッジかインプラントならブリッジのほうがいい
→ウソ×

ブリッジは、手術なしで短期間で治療でき、かみ合わせの調整が天然歯と同じようにできるのがメリット。ただし、健康な歯を削るうえに、2本の歯で3本分の人工の歯を支えるので両側の歯に負担がかかる。インプラントは、歯は削らないものの手術を要し、かみ合わせの調整も難しい。ともに利点と欠点があり、一人一人の口腔内の状態によるので、ケースバイケース。
QUESTION(4)ホワイトニングは時間をかけたほうがいい
→ホント◎

方法はいくつかありますが、レーザーなどで一気に白くするより、患者さん自身が自宅で、トレー(マウスピース)に薬剤を入れてゆっくりと漂白するほうが刺激は少ないので、歯にとってはいいと思います。後者の方法によるホワイトニングだと、通院回数は4~5回で、1~2カ月かかります。また上顎、下顎の両方の場合は1.5倍の期間と回数になります。
QUESTION(5)ストレスで歯がグラグラ。これって歯周病?
→ホント◎

精神的なストレスが強いと、無意識に歯ぎしりや食いしばりをしてしまいがち。その力はすさまじく、寝ているときの歯ぎしりは、起きているときに思い切りかむ力の5倍もあるそうです。歯周病の主な原因は細菌感染ですが、歯周病の状態で歯ぎしりや食いしばりをすると、歯は一気に破壊され、歯周病の悪化速度が倍増。グラグラになってしまうこともあるので要注意。
QUESTION(6)歯周病になってしまったらもう治らない
→ウソ×

歯茎を切開してなかをキレイに掃除して、薬を塗って治す、外科手術による歯槽骨の再生医療ができるようになりました。よほど悪化した歯周病でない限り、だいたい半年から1年で骨が再生し、歯を残せる可能性があります。新薬が開発されるなど、治療法は進化しています。ただし、骨の再生には条件があるので、歯周病の専門医に尋ねてみてください。
QUESTION(7)インプラントにしても歯周病になる
→ホント◎

インプラントは虫歯にはなりませんが、油断禁物。歯周病には天然歯以上に注意が必要です。というのも天然歯と違って、防御機能がないからです。細菌に感染してしまうと、歯周病は一気に悪化します。しかも悪化した後の治療法が確立されていないため、天然歯の場合よりも重症化しやすい。長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
QUESTION(8)インプラントの相場は決まっている
→ウソ×

1本40万~80万円とばらつきがあり、なかには8万円と極端に安価なところもありますね。はっきり言って、安さを売りにするところは要注意です。インプラント単体でも精度の高いしっかりした品質のものは1本5万~6万円はします。それに技術料や手術代、診断料等々を考えれば、最低1本40万円はかかります。どこかで手を抜かない限り、それ以下の値段ではできません。
佐々木 猛(ささき・たけし)
医療法人貴和会 新大阪歯科診療所院長
1969年生まれ。大阪大学歯学部卒業。歯科医師の卒後研修団体JIADS理事。週2日は銀座歯科診療所でも診療している。
 

イラスト=itabamoe