せりふとしての口癖は、意識して際立たせる
ノイズはこのような方法で消しますが、せりふとしての口癖は消さず、反対に際立たせましょう。このタイプの口癖は、その人の価値観や考え方を表す大事な言葉であることが多いので、キャッチコピーのような役割を果たします。素晴らしいビジネスアピールになるのです。
たとえば「頑張ります」と、いつも言っている人には、向上心の高さを感じます。「挑戦します」ならチャレンジ精神が旺盛な人、「確認します」なら慎重な人となるでしょう。
ですから、自分が他者に与えたい印象のせりふをあえて口癖にしてしまうのです。緻密な強みをアピールしたいなら、「調べます」「確認します」といったせりふを口癖にして、わざと何度も使いましょう。周りにあの人はあんな口癖があるよな、と思わせたら成功です。
今の自分の「口癖」を調べるカンタンな方法
こうしたビジネスアピールとしての口癖をつくる前にまずは、今の自分の口癖を調べましょう。そこに「こういう印象をもたれたい」という自分の潜在的な欲求があるかもしれません。調べる方法は2つ。ひとつは、会議や打ち合わせなどで自分の話を録音すること。もうひとつは、会社の人や家族など身近な人に聞くことです。特に部下や後輩などに聞くとよいでしょう。
実は私も以前、このビジネスアピールとしての口癖を使ったことがあります。
私が初めて本を出版したときのことです。『その話し方では軽すぎます!』というタイトルでした。これは、担当編集者が打ち合わせのときに「矢野さんは、すぐに『その話し方じゃ軽すぎる』って言いますよね」とおっしゃったことから生まれたもの。私はそれまで話し方のスキルをクライアントにお伝えするときに「軽すぎる」という言葉を使っている自覚が全くありませんでした。この本をつくるに当たって、自分の理論を説明するときに「軽すぎる」という言葉を連呼していたのです。
つまり、自分の価値観を伝えようと何度も同じ言葉を発していたことに、編集者が気づいてくださったのです。部下や後輩など教える相手に聞いたほうがよいのは、自分のスキルを伝えようと、自分の口癖を無自覚に繰り返している可能性があるからです。