「間(ま)」をとるのは黙ることですから、勇気がいります。しかし「間」がうまく使えると、テンポよく会話できるようになります。今回はビジネス場面での会話とふだんの会話のテンポについて、お話ししましょう。

ふだんの会話は、バリエーション豊富

まずビジネス場面での会話とふだんの会話とでは、話すときのテンポ=速さが違います。音楽でいうと、ビジネスはクラシックのような落ち着きのある雰囲気です。あいづちも「なるほど」「わかりました」「承知しました」といった言葉が多く、テンポにそれほど大きな変化はありません。しかし、ふだんの会話は早口だったり、ゆっくりだったり、「えっ」「げっ」といった、言葉になっていない音のリアクションもたくさん出てきたりするので、雰囲気やテンポが変わりやすい。バリエーションが多く、メリハリがきいている分、ビジネス場面よりもふだんの会話のほうが難しいと言えるでしょう。

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ビジネス場面での会話では、そう大きく変化しないとはいえ、テンポはそれぞれの会社や業界で異なります。速いところ、遅いところ、さまざまです。1度、ご自分の会社や業界、もしくはチームがどういうテンポなのか、分析してみるのも面白いでしょう。そうすると「うちの会社はテンポが速いようだから、取引先ではテンポを落として相手に合わせよう」「取引先はゆったりしてテンポが遅く、話が活性化しづらい。うちの速めのテンポで進めて、意見をどんどん引き出していこう」などとテンポを戦略的に使えます。

具体的な戦略としては、テンポアップしたいときは、質問をいくつも重ねていくとよいでしょう。さらに、「不便だと思ったことはありませんか?」「ありますよね」と相手に言ってほしい言葉を自分で言いながら話を進めてしまいます。反対にトーンダウンしたいときは、相手の話に対し、ひたすらうなずいてノートをとる。ゆっくりと相手の答えをもう一度繰り返すなどして、一つ一つ確認しながら進めます。このようにテンポを調整することができれば、こちらのペースに持っていき、場をコントロールすることができるのです。

相手の会話をさえぎらない

こうした話し方や、呼吸などの相手の状態に合わせてコミュニケーションをとる方法は、心理学で「ペーシング」といいます。ペーシングは話し方や呼吸を相手に合わせるだけでなく、ご紹介したように自分のペースに誘導することもできます。ただし、このときには注意点があります。それは、相手の話の途中で、こちらが話し始めないこと。途中で話が変えられると、相手は「まだ話したかったのに、話題を変えられた」と不満が残ります。ビジネスの交渉の席であれば「相手の条件ばかりを押しつけられた」という感覚を持たれてしまいます。相手の息を読んで、息が切れるまで待ってから話す、という「間」の大原則を忘れないことが重要です。